階層別研修とは ~階層別研修と選抜研修の違いや実践するためのポイントを解説します~

研修の設計から実施まで、
人材育成は人事の仕事のなかでもとくに大変な仕事です。

研修は時代と共に常に進化していることもあり、
どんな研修にすればいいか、多くの人事が悩んでいます。

研修というと一般的には、
役職や勤続年数に応じておこなう『階層別研修』が基本となる場合が多いです。

本日は、そんな階層別研修について、
選別研修との使い分けやメリット・デメリット、
具体的な研修事例をご紹介します。

階層別研修とは

『階層別研修』とは、役職や年齢、勤続年数などの基準で
社員を階層に分けておこなう教育研修のことです。
たとえば階層別研修には、
管理職研修や3年目社員研修、新入社員研修などがあります。

階層別研修の目的は、
対象の社員が現在抱えている仕事をおこなうために
必要なマインドや能力を身に着けることです。
つまり、社員の能力の「底上げ」を目指して実施するのが、
階層別研修といえます。

新入社員・3年目・管理職など、特定の階層に必要なスキルやマインドを、
対象となる社員全員に身に付けさせることを目指します。

また、階層別研修は特定の階層に「なってから」おこなわれる研修です。
たとえば”新任管理職研修”であれば管理職に、
新入社員研修であれば新入社員になった社員に対して研修を実施します。

階層別研修と選抜研修の違い

階層別研修と並行して人事が実施する研修には、『選抜研修』があります。
階層別研修と選抜研修は、研修対象者や目的、位置付けが対照的ですので、
両者を詳しく比較すると、この階層別研修についてより理解がしやすいです。

そして、両者の違いを簡単にまとめたものが、以下の表です。

【階層別研修と選抜研修の違い】

選抜研修とは、
企業側が一定の基準のもとで社員を選抜し、研修に参加させる研修です。

階層別研修と違い、研修の対象者を絞って実施されるため、
育成コストが削減できるだけでなく、
必要なタイミングで人材を育成することができます。

選抜研修の対象者は、
次世代の幹部候補生となることを期待されている社員であることが多いです。

選抜研修の目的はおもに、
一つ上の階層に必要な要件を身に着けさせることです。
つまり、目指す階層になる前に、
対象となる社員の能力の「引き上げ」を目指して実施されるのが選抜研修です。

企業が期待する優秀な人材を選抜し、育成していくことから、
特定の階層に「なる前」におこなわれることも、階層別研修との違いです。

階層別研修のメリット・デメリット

階層別研修は、その階層にいる社員全員が対象となる研修です。

そんな階層別研修のメリットには、以下の2つが挙げられます。

【階層別研修のメリット】

■階層ごとにスキルの均一化ができる

対象となる階層にいる社員のスキルレベルにばらつきがあることは、
組織の運営上好ましい状態ではありません。

対象となる社員がもつスキルのレベルをなるべくそろえ、
誰もが一定以上の業務遂行能力を発揮できることは、
効率的な組織運営につながります。

■同階層社員との交流でモチベーションアップが期待できる

同じ階層にいる社員同士であれば、
仕事に対する考え方や普段の業務の進め方など共通の話題や課題も多く、
階層別研修はお互いのノウハウを交換する場にもなります。

立場が近い社員同士での交流は、
新たな気付きをもたらし、視野を広げることにつながります。

【階層別研修のデメリット】

一方で、階層別研修には以下の2つのデメリットが挙げられます。

■研修のコンセプトがあいまいになりやすい

同じ階層にいる社員全員が対象となる階層別研修では、
社員のスキルレベルも大きく異なりますし、抱えている課題も違いますので、
研修のコンセプトがあいまいになりやすいというデメリットがあります。

ですので、効果的な階層別研修を実施するためには
各研修のコンセプトを明確にしなければならず、
そのためには長期に渡る人材育成計画とその基となる経営戦略が必要です。

自社の人材育成計画と経営戦略に則した研修内容にすることで、
自社にあった階層別研修を実施することができます。

■研修が形骸化しやすい

「階層別研修は入社から一定の期間が経過したときや
特定の役職に昇格したときにルーティンで受講するもの」
と捉えている社員も少なくありません。

結果として階層別研修そのものが形骸化してしまい、
単に社員の交流の場になってしまっているケースもあります。

多くの企業で導入されている階層別研修ですが、
「参加者の意識が低い」「やらされ感があり受講姿勢が受け身」
「知識やスキルが定着しない」のような課題が発生するのはこのためです。

【選抜研修との比較】

先ほどと同様に、選抜研修と比較すると、
より階層別研修のメリット・デメリットが理解できます。
図にまとめましたので、ぜひご参考にしてください。

■階層別研修のメリット・デメリット

■選抜研修のメリット・デメリット

階層別研修を実践するためのポイント

人事担当者が階層別研修を効果的なものにするためのポイントには
以下の2つが挙げられます。

■研修の目的を明確に伝える

階層別研修のデメリットは前述のとおり、
受講者の“やらされ”感が強いことです。

そのため、「業務との関連性」を明確に伝え、
なぜ研修を参加するのか理解してもらうことが有効な対策として挙げられます。

「自分に何のメリットがあるのか」「どう仕事に活きるのか」など、
業務との関連性を受講者が納得すると、研修参加が自分ごとになります。

一方で選別研修では、“選ばれた”感が強いので、
選抜された意図を明確に伝える必要があります。
「なぜ自分か」「どういう選定基準か」を明確に伝えることで、
研修への参加姿勢が変わります。

■研修の目的を柔軟に調整する

階層別研修の目的は一度決めたら終わりでなく、
時代に合わせて変化させていく必要があります。

また、階層別研修の目的は“底上げ”ですが、いつ、“底上げ”すべきか、
組織や個々人の現状を踏まえて、柔軟に実施時期を調整することもあります。

たとえば、本来であれば、階層別研修は課長に「なってから」実施しますが、
経営環境の変化が早い現代においては、
課長になってからでは間に合わない可能性があります。

課長になったらすぐに、
課長としての役割を全うして成果を出してほしいと考える場合、
実施時期を「なる前」の研修へ変えることも有効です。
この場合、対象者は全員なので選抜研修にはなりませんが、
意味合い的に、研修の目的は“底上げ”から“引き上げ”へと変わります。

選抜研修はあくまでも少数の人を対象とした研修ですので、
組織全体を成長させるためには、
階層別研修が人材育成のメインであることは変わりません。

ただ、中途採用の増加、企業における事業・機能の複雑化、
副業による実務経験の多様化などにより、社員個々人の経験や
持っているスキル・マインドの同質性が低くなってきています。

どのタイミングでどんな内容の研修をさせるべきか、
組織や社員の状況に応じて、
柔軟に調整することを求められる企業が増えています。

階層別研修の具体的な事例

階層別研修は、一般的に下記のように、
階層ごとに設定されているそれぞれの目的にあわせて、
研修内容が設計されています。

また、その際、人事担当者は以下の3つのポイントを考慮すると、
より効果的な階層別研修を設計することができます。

「目的意識」:階層別研修を通じて、実現したい事は何か
「自己不足感」:各階層に今何が、どの程度、不足しているか
「主体性」:階層別研修を心の底から“やりたい” 
      ”やる価値がある” と思えているか


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