「すべての世代にキャリアを考える機会が必要だ」

「キャリア」と聴いて、どんなことを思い浮かべるでしょうか?キャリア官僚?
キャリアウーマン?(最近は使わない言葉ですね)。
辞書では、「経歴」と記されています。どんな仕事をしていくのか、
どんな生涯を過ごしていくのか、それが「キャリア」です。

もともとは、「轍」が語源だそうです。馬車が通った跡の轍、今まで歩んできた道、
これから進んでいく道ですね。まさに、経歴であり、人生ということでしょう。

文部科学省では、『「キャリア教育」とは、望ましい職業観・勤労観及び
職業に関する知識や技能を身につけさせるとともに、自己の個性を理解し、
主体的に進路を選択する能力・態度を育てる教育』と位置づけ、
小学校、中学校、高校において、「キャリア教育」を実施しています。
多くの大学で、キャリアセミナーが設置され、就職への指導を行っています。

では、なぜ就職した後の社会人に「キャリア」を考えることが必要なのでしょうか?
すでに就職し職業も決まり、キャリアを考える必要はなさそうです。
しかし、多くの企業において、キャリアデザインセミナー、キャリア開発研修を
実施しています。社会人における「キャリア」とは何なのか、考えていきましょう。

人生100年時代、キャリアを自ら築く時代

医学の進歩や食生活の変化により、日本では男性81歳、女性87歳が
平均寿命となっています。
平均寿命は、生まれた赤ん坊が亡くなるまでの平均です。
若いうちに亡くなってしまう方も含まれます。

あと、何年生きることができるのかを表す「平均余命」でみると、
50代の約半分は90歳まで生きると言われています。
まだまだ100歳には及びませんが、人生100年時代に突入したと言えるでしょう。

「人生100年時代」という言葉が広まったきっかけは、日本では2016年に発売された
ロンドンビジネススクール教授のリンダ・グラットンによる「LIFESHIFT」です。

「LIFESHIFT」では、人生が長くなることによって、生き方が大きく変わることを
説いています。
教育→仕事→引退というライフサイクルが定着してきましたが、これからは、
人生が長くなることによってマルチサイクルになっていく。

常に、社会情勢や個々の興味に応じて学び直しが必要となり、
キャリアチェンジが行われると解説しています。詳しくは、
ぜひ「LIFESHIFT」をお読みいただければと思いますが、「キャリア」への考え方が
変わってきていることは間違いなさそうです。

終身雇用の崩壊

さらには、日本では、いままで終身雇用が一般的でした。
学校を卒業して就職した会社にほとんどの人が定年退職まで勤め上げることが
当たり前であり、美徳とされた時代でした。

しかし、新入社員の3割が3年以内に辞めると言われる時代です。
経団連の元会長であり、日立製作所の中西元会長
(2021年6月にお亡くなりになられた)も、トヨタ自動車の豊田社長も、
終身雇用の時代は終わったと公言しています。

日本を代表する大企業ですらも、終身雇用を続けていくことが困難な時代に
なってきたのです。

新卒一括採用、労働組合、終身雇用は、日本型雇用の3大特徴でしたが、
大きく変わろうとしているのです。

厚生労働省も、この労働環境の変化を受け、キャリアコンサルタント
10万人計画やセルフキャリアドックの推進を図っています。

人生100年時代になるとともに、終身雇用が崩壊する中で、
日本の企業、日本の労働者の生産性を向上させなければ、国際的な日本の競争力、
国力はどんどん低下してしまいます。

働く期間が長くなるとともに、ひとりひとりが自律してキャリアを形成し、
プロフェッショナルとしての完成度を上げ、柔軟に働くことができる能力を
身につけないといけない時代になってきたということです。

組織においても、社会的にも、ひとりひとりがこれからの自分の「キャリア」を考え、
実現していくことが重要視されているのです。

職業選択から生き方へ

ひとりひとりが「キャリア」を考えることで、なぜ生産性が向上するのでしょうか?
それは、単に言われた仕事、決められた仕事をするだけの人材ではなく、
自ら考え行動でき、専門性を持ったプロフェッショナル人材が増えていくことで、
生産性が向上していくということです。ひとりひとりの能力やスキルが向上すれば、
アウトプットのレベルが向上し、付加価値が増加します。

自発的・自律的に行動することで、効率が高まり、生産性も高まります。
「キャリアを考えると、なぜプロフェッショナルになれるの?」と疑問を
持つ方もいらっしゃるかも知れません。

「キャリア」を考えるということは、シンプルに言えば、どんな人間になるか?
どんな生き方をするか?ということです。つまりは、人生における「目標」を
設定するということです。

自分は、どんな仕事をしたいのか?何がやりたいのか?何ができるのか?
それらを考えること、それらを設定して行動することが、
「キャリア」を考えるということであり、「キャリアデザイン」ということです。

さらには、どんな仕事をするか?つまりは職業の選択だけではなく、どう生きるか?
人生の選択が、「キャリア」を考えるということになります。

一昔前(ほんの百数十年前)までは、日本において個人で職業を選択することは
できませんでした。
親の職業、家系の職業が個人の職業となっていました。農家に生まれたら農家となり、
商家に生まれたら商人になるのが、明治以前は当たり前でした。

しかし、現代においては、職業の選択だけでなく、どう生きるかも選べる時代です。
終身雇用も崩壊し、どう生きるかは個人個人が考えなくていけない時代になったのです。
だからこそ、国はセルフキャリアドックを推奨し、ひとりひとりが主体的に
キャリアを形成する機会を創り出せるよう支援し、企業においても在籍中に
最大のパフォーマンスを発揮してもらうために、キャリアセミナーを行うのです。

では、どのように、「キャリア」を開発すればよいのでしょうか?

20代のキャリア開発

「キャリア」については、さまざまな考え方や理論があります。年齢層や置かれた環境、
本人の特性によっても、キャリアの考え方、作り方はさまざまです。

正解を導き出すような方程式はありません。まずは、就職して働き始めた
20代のキャリアについて考えていきましょう。

キャリアを考えるうえで、よく使われるのが、「MUST-CAN-WILL」という考え方です。

WILLはやりたいこと、CANはできること、MUSTはやらなければならないことです。
「MUST-CAN-WILL」の重なり合うことを仕事にしなさいとよく言われます。
やりたいこと、できること、やらなければならないことが、重なり合う仕事です。

果たして、本当でしょうか。

というか、そんな仕事が20代においてあるのでしょうか?
天才であれば、そんな仕事もあるかも知れません。
久保建英にとって、サッカーはまさに「MUST-CAN-WILL」の重なり合う仕事でしょう。
期待もされているし、できるし、やりたいことが、サッカーです。大谷翔平もそうでしょう。

若くして、才能を発揮できる人は、「MUST-CAN-WILL」な仕事をしていると
言えるでしょう。
藤井聡太もそうですね。

では、天才ではなさそうな我々はどうすればよいのでしょうか?
「MUST&CAN&WILL」の関係でなく、「MUST→CAN→WILL」と捉えてみては
いかがでしょうか?
つまり、「MUST-CAN-WILL」の重なり合う部分ではなく、
まずは、「MUST」を実行する。

「MUST」とは、やらなければならないことでもありますが、
やってほしいという組織からの期待でもあります。まずは、やらなければならないこと、
期待されることをしっかりとやってみる。「WILL」ではないかも知れないがやってみる。

そうすると、「MUST」は、「CAN」に変わります。
一生懸命行えば、立派な「CAN」になります。「CAN」を持つ人は信頼されます。
信頼されるとさらに仕事をお願いされます。
「仕事の報酬は仕事」なのです。

いい仕事をする人には、さらにいい仕事が任されます。

「MUST」だった仕事を実行していく中で、「CAN」がどんどん増えていき、
信頼されれば、「WILL」にも結び付きます。「CAN」を多く持つ人が、
さらにパフォーマンスを発揮するためには、やりたいことをやってもらうことが
一番です。
やりたいことをやるチャンスも増えるのです。

つまり、20代でのキャリア開発では、「CAN」を増やすこと、
もしくは「CAN」のレベルを上げることが必要となります。
何をしたいのか、「WILL」が見つからないと嘆く前に、「MUST」を徹底して
「CAN」を増やすのです。

もちろん、明確な「WILL」(目標)がある人は、「WILL」をやるためには
何が必要なのか?「WILL」までの道筋、キャリアのタイムラインを考え、
そのために必要なことを実行します。「MUST」の仕事に中に、
「WILL」へと結びつくことを見つけることが必要です。

すこぶる優秀なドアボーイは、ドアボーイのままではいられないのです。
さらに重要な仕事を任されます。

すこぶる優秀な下足番であれば、下足番のままではいられないのです。
つまりは、「CAN」、できることを増やしていくしかないのです。

キャリア研修では、「MUST-CAN-WILL」を顕在化することが重要です。
自分ができることは何なのか?どんな経験を積んできたのか?
強みは何なのかを明確にします。
さらには、やらなければならないこと、期待されていることは何なのかを明確にします。
そして、やりたいことを考え、やりたいことをやるために必要なことを明確にします。

自分自身の「MUST-CAN-WILL」を明確にすることで、
どんな行動をしていく必要があるのかが明確になります。

50代のキャリア開発

では、50代のキャリアはどのように考えればよいのでしょうか。
2021年の高年齢者雇用安定法改訂によって、70歳までの雇用確保が
努力義務化されました。
70歳まで働くことができる時代、働かなくてはならない時代になったのです。

キャリアの考え方は、50代も20代と同じです。「MUST-CAN-WILL」のフレームで、
キャリアを考えることが有効です。

50代であれば、30年前後働いてきているので「CAN」はそれなりに身について
いるはずです。

しかし、本人は長い間仕事をしている中で、「CAN」であることの認識が
できなくなっているかも知れません。
当たり前のことになっているのです。改めて、「CAN」を顕在化し、
どの「CAN」が今の組織に貢献できるのかを考えていく必要があります。

さらに、50代において重要なことは、「WILL」です。人生100年時代なので、
仮に70歳で退職したとしても、そこから20年、30年の時間が残されています。

50代のキャリア開発においては、退職後の20-30年も含めたライフキャリアとして
考える必要があります。
残りの人生において何をなすのか?自分自身の「WILL」は何なのかを見つけ出す、
もしくは再発見する必要があるのです。「WILL」を見つけ出すことによって、
50代、60代の組織における時間も有意義に過ごすことができます。

その先の20-30年に向けた準備ができるのです。

「キャリア」は偶発的

20代においても、50代においても、「WILL」つまり「目標」は重要です。
目標があることで、モチベーションを持って仕事に取り組むことができ、
新しいことにチャレンジすることもできます。

しかし、キャリアは目標通りにはなりません。
スタンフォード大学のジョン・クランボルツ教授が提唱する
「プランドハップンスタンス理論」をご紹介しましょう。

成功したと言われるビジネスマンにインタビューしたところ、
彼ら彼女たちの約8割は、自分の想い描いたキャリアではない形で成功していたのです。

つまり、8割の人は自分の目標通りのキャリアでは成功できないということです。
しかし、目標をもち、アンテナを張って、目標達成に向けて努力することで、
自分の予期しない形ではあるが、結果的には成功したと言われるようになっているのです。

これは、「計画的偶発性理論/プランドハップンスタンスセオリー」と呼ばれています。
キャリアは、なかなか思い通りには実現できないかも知れないが、
目標を持って努力することで、偶発的に切り開かれていくものであるという考え方です。

キャリア形成において大事なことが、「WILL」=目標を見つけ出し、その達成に向け、
行動していくことなのです。

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