360度評価とフィードバック

近年、人事評価制度の見直しをおこなう企業が増えています。
「日本の人事部 人事白書2020」では、評価制度の今後の方向性についての
質問に対する回答で最も多かったものが「成果主義」で、
84.7%の企業が成果主義を強化するとしています。

企業形態が年功序列型から能力主義、能力主義から成果主義へと移行しており、
職務層や勤続年数を基にした単純な評価が困難になっています。

一方で、人員削減や人材不足傾向が拡大し、現場の実務と部下の管理を兼任する
プレイングマネジャーが増えるなど、評価する側にとってもされる側に
とっても納得感のある評価をすることが難しくなっています。

評価に納得感がないと、社員のモチベーション低下につながってしまいます。
そこで注目されている人事施策のひとつが「360度評価」です。

360度評価とは、一般的におこなわれている上司のみによる評価ではなく、
複数の様々な立場にある関係者が、1人の社員の評価をおこなう制度です。

その最大のメリットは、多面的な評価がおこなわれることにより、
上司だけでは気づけない側面を、多数の目で補完できることです。

多面的な評価は、評価対象者の特性を浮き彫りにするといわれており、
評価の内容は、評価対象者の成長にとって欠かせない情報となります。

この情報は、エンゲージメント向上にも役立ちますが、人材育成として、
本人に改善の材料として提供していくことも大切な目的のひとつです。

使い方によって様々なメリットの多い360度評価を活用することで、
人材の特徴が多面的にわかり、その人に合った人材育成の方針を決めることに役立ちます。

また、評価対象者にとっても、これまで気づいていなかった自分の特徴を
客観視でき、把握することで、「改善すべき点はどこなのか」などを主体的に
考えられるようになります。
また、評価する側にとっても企業の行動基準をもとに、
評価者として他者を評価することで、社員に求められる行動方針への
意識浸透も期待できます。

360度評価と当事者意識醸成

360度評価を取り入れることで、マネジメント層ではない社員も、
評価者としての視点を身につけることができ、視野が広がります。

また、自分の意見が組織運営に反映されることを実感することで肯定感が生まれ、
社員としての当事者意識醸成が期待されます。
普段、指導やフィードバックを受ける機会が少ないマネージャーも
評価対象者になりますので、360度評価をきっかけに自分の行動について
新たな気付きや発見が得られ、行動変容につながることができます。

一方で、360度評価のデメリットとして代表的なものが、
評価のバラツキが発生することと、上司や同僚との人間関係を意識して
忖度した評価になってしまうことが挙げられます。

このようなデメリットが発生しないように、360度評価を何のために導入し、
何に反映し、具体的にどのように活用されるものなのかを周知したり、
評価項目を工夫したりするなど、社員にフィードバックについて正しく
理解してもらうことも非常に重要です。

360度評価とフィードバック

評価される社員の行動を観察し、組織やチームの一員としてフィードバック
することが360度評価の大きな特徴です。

その評価内容は評価される社員の「スキルや能力」を評価するものではなく、
組織やチームでの「行動状態」を観察し、本人にフィードバックします。

フィードバックでは「あなたの行動は周囲に伝わっています or いません」
といった視点から、本人に「気づき」を与え、行動を変えるように促すことができます。

ですが、このフィードバックは非常に難しく、評価に慣れない社員は、
評価対象者に対して持っている印象に引っ張られるなど、正しくフィードバックが
なされないことがあります。
せっかく360度評価を取り入れても、これでは評価対象者が大きな誤解や
不満を持つことになりかねません。

たとえば、自分は頑張っているつもりなのに周囲の評価が低いと、
「誰も私のことをわかってくれない!」と事実を否定してしまいやすくなります。
このように、人からの評価と自分の評価が矛盾する「新しい事実」を突きつけられた時に
感じる不快感のことを「認知的不協和」といいます。

このような認知的不協和を生み出さないためにも、フィードバックでは、
評価対象者が自身の態度や行動を変えるという選択を取ることができるように、
自身の評価を正しく理解し、自分の「実態」をきちんと把握できる伝え方が
ポイントとなります。

ですので、評価に慣れない方はもちろん、行動状態を観察してフィードバックが
できていないマネジメント層に、正しいフィードバック方法を習得して
もらうことが必要です。

正しいフィードバック方法とは

フィードバックは、評価対象者にとって受け取りやすいもの、
理解しやすいもの、改善につなげられるものである必要があります。
そのために、フィードバックは「事実」に基づいて伝えることが重要です。

評価に感情や感想が入ってしまうと、人によって受け取り方が変わってしまい、
認知的不協和が発生しやすくなってしまいます。

たとえば、「商談3日前までに企画書を作成するよう依頼したのに、
提出されたのは2日前の夕方でしたよね」というのが事実に基づいた
フィードバックで、「提出が遅れるなら事前に連絡するのが当たり前だよね。

どうして締切が守れない上に連絡もできないんですか」と伝えるのが
感情・感想に基づくフィードバックです。

感情・感想に基づくフィードバックは、
「あなたは間違っている」「あなたは改善すべきだ」というメッセージとして
伝わりがちです。
そうすると、評価対象者は言い訳を考えるようになり、フィードバックを
受け取ろうという状態になりません。

一方、事実に基づくフィードバックは評価対象者も受け取りやすく、
その事実が周囲にどのような影響を及ぼしているかなど、
さまざまな視点から話し合うことができます。

そのためにも、フィードバックの際には、組織におけるヒトに対する
フィードバックなのか、コトに対するフィードバックなのかを分けて
伝えることが必要です。

たとえば、「もう少し元気な声で話したらどうかな」のような姿勢に関する内容や、
「もう少し伝わるように話してくれれば」といったスキルに関する内容など、
ヒトに対してのフィードバックは慎重におこなわなくてはなりません。

ヒトに対する内容は目につきやすい一方で、感情・感想が入りやすく、
フィードバックはお互いにネガティブな印象を持つことになりやすいのです。

一方で「この提案書はこんな項目があったらもっと良くなったね」
というプロセスに関する内容や、「こんな考え方もあるんじゃないかな」
というアイディアに関する内容など、コトに関してのフィードバックであれば、
改善が評価される側にとっての目標達成につながるので、納得感が得られやすく、
改善に向けた行動にもスムーズに反映されます。

このような正しいフィードバックを身に付けることで、
導入した360度評価のメリットを、評価する側・される側双方にとって最大限活かせるようになります。

そこで今回は、360度評価でのフィードバックにお悩みのあった企業様で実施した
研修事例を紹介します。

弊社では、個社ごとに完全オーダーメイドで研修をご提案しております。
パートナーとして協力いただいている外部トレーナーが400名以上おり、
個社ごとに合った研修をプロデュースすることに自信を持っています。

本記事を参考に、是非自社に合ったフィードバック研修を実施し、
研修後の行動変容を定着させる取り組みをおこないませんか。

360度評価フィードバック研修紹介

【テーマ】
評価・フィードバック研修


【ねらい】
・プロセス評価の考え方と具体的な内容を理解する
・フィードバック面談に向けた心構えをする


【内容】
1)プロセス評価の目的と考え方
何のために評価をするのか?を考え、その目的を実現するために
何が大事なのかを議論します。

また、プロセス評価とは何かを考え、その原則を理解します。
評価力を高めるために、個人ワーク「3人の異なる特徴をもつ人物のうち
誰と一緒に仕事をしたいか」をおこないグループで意見交換をします。
評価の3つのポイントを学び、現場で使えるようにグループワークで理解を深めます。

2)評価を体感する
成果だけではなく、プロセスを評価することの重要性を学びます。
各プロセスにおいて、行動評価の対象となる行動事実を抽出する練習をします。
また、その行動をどのレベルで評価するべきかを考えます。
各社ごとにカスタマイズした「こんなときどう評価する?」というあるある場面を
想定したワークに取り組み、行動評価の理解を深めます。

3)フィードバック面談の進め方
コミュニケーションにおける課題と、評価面談の課題について類似点を学びます。
多様な考えや癖を持つ社員とのコミュニケーションを円滑にすすめるために、
4つのコミュニケーションタイプを用いて、自分や他者のタイプを知ります。
また、タイプ別の対応ポイントを理解し、職場のメンバーを想定し
ペアワークで面談の練習をします。

4)今後に向けて
評価者としての心構えをするためにマネジメント傾向チェックシートで
自分自身のマネジメント傾向を認知します。

評価を歪めてしまうアンコンシャス・バイアスなどの存在を知り、
今後のコミュニケーションや面談で気をつけることを書き出しグループ内で宣言します。

 

関連記事
関連記事

将来にモヤモヤしている40代社員に必要な「キャリア自律」と「新たな挑戦のイメージ」

「上からの命令と、下からの不満で板挟みになる」など、ネガティブなイメージの多い中間管理職。この中間管理職にいるもっとも多い年代が40代の人たちです。今回のコラムテーマはそんな40代社員に必要なキャリアデザインです。管理職という立場や、仕事以外のライフイベントに直面していく40代社員にとって、これから必要な将来の目標や組織の中で持つべきマインドについて解説します。

Read More »

オーナーシップとは? 具体例やメリット、社員の主体性をはぐくむマインドセットの方法がわかります

“オーナーシップ”は、端的に言うと「仕事に当事者意識をもって取り組む姿勢」のことです。オーナーシップをもった社員が多い組織では、コミュニケーションが活発になり、リーダーシップを発揮するメンバーが増え、顧客満足度が上がるなど、さまざまな場面で好循環が生まれやすくなります。

Read More »

「本当は助けて欲しい」キャリアの分かれ道で苦しむ30代を救うキャリア形成支援

30代社員は、20代とは異なり、いろいろなことがひとりで出来るようになっています。また、同じチームメンバーや関係部署とのやりとりなどもあります。そして、仕事の取り組みかたなどから、上司や周りからの評価の差が明確に現れる時期でもあります。今回のコラムでは、そんな30代社員がこの先も前向きに仕事に取り組み、周りからの協力も得ながら自身の目標に向かうために必要なものについて解説します。

Read More »

【新人フォロー】“いい子に思われたい”新入社員の受け身の姿勢を転換する研修事例紹介【主体性】

令和になってから入社した新入社員の特徴として、「自分がどう思われているか敏感で、嫌われることを極端に避けようとする」というものが挙げられます。横並びの意識が強く、目立ちたがらず、言われた仕事をたんたんとこなすのが、令和時代の新入社員によく見られる姿のようです。そこで今回のコラムでは、“いい子症候群”をキーワードに、受け身な新入社員の主体性を醸成する方法をご紹介します。

Read More »

シニア世代がイキイキと活躍するために 〜シニア世代の働きかた支援〜

65歳以上の高齢就業者の数は、17年連続で増加し、2021年は906万人で過去最多の人数となりました。少子高齢化社会の中、企業にとって切実な問題となっているのが、現場におけるシニア世代の活用です。シニア世代の活用」とは、シニア世代がイキイキと活躍しており、周りの人たちもそこから何らかの恩恵を受けている状態です。この実現のために、シニア世代と会社はこれまでの認識を改め、新しい考えかたを持たなくてはなりません。

Read More »

「コンセプチュアルスキル」とは? ~意味や身につけるメリット、育成の具体例もご紹介~

コンセプチュアルスキルとは、正解のない問題に直面したときに、問題の本質を見極め、周囲が納得できる最適解を導き出す能力のことです。コンセプチュアルスキルを磨き、物事の本質を見極めることができるようになると、個人や組織の可能性を最大限まで高めることができるといわれています。このコラムでは、コンセプチュアルスキルの概要をご紹介し、身につけるメリット、身につけさせるための具体的な研修事例を解説します。

Read More »

無料ダウンロード資料で情報収集

貴社名

お名前

Email



時期

Download files 【お役立ち資料】効果的な研修設計のポイント
【お役立ち資料】オンライン研修設計のポイント

【事例紹介】主体性を生み出す研修
【事例紹介】マインドを変える研修
【事例紹介】見え方を変える研修
【事例紹介】若手社員マインドセット研修
【事例紹介】グローバルリーダーマインドセット研修

【事例紹介】女性リーダー研修成功のポイント
【事例紹介】ダイバーシティマネジメント研修

【事例紹介】28歳までにはじめる女性キャリア研修
【事例紹介】女性活躍研修事例紹介5種

【事例紹介】働き方改革推進のための研修事例13種
【お役立ち資料】男性育休の現状とは
【事例紹介】シニアのキャリア自律.をうながす研修
【事例紹介】アンコンシャス・バイアスとは何か
【参考資料】高度外国人材はどんな存在なのか

【事例紹介】世代別キャリア開発成功のポイント
【事例紹介】コーチング研修事例紹介3種
【お役立ち資料】リーダーシップとは何か
【事例紹介】リーダーシップに必要なスキルとは何か
【事例紹介】変革型リーダーシップ研修事例

【事例紹介】言葉の持つ力「ファシリテーション研修」
【事例紹介】褒め方&叱り方を身につける研修
【事例紹介】伝える力と聴く力
【お役立ち資料】日常づかいの1on1対話スキル
【お役立ち資料】日常づかいのアンガーマネジメント

【お役立ち資料】研修で「行動変容」を定着させるには
【お役立ち資料】研修の事前・事後の取り組み紹介
【研修リアルストーリー】プレイバックシアター

 全てダウンロードする