ダイバーシティ&インクルージョン推進の中で、今最もホットな話題が
グローバル化です。
その中でも特に「高度」外国人材の受け入れに注目が集まっています。
日本企業ではこれまで、日本で働く日本人人材をグローバル人材として育成し、
諸外国へ送り出すことが多く、整備されている人事制度や人材育成の対象は、
日本人である場合がほとんどです。
一方で、総務省の発表にもあるように、日本の生産年齢人口は
減少局面に入っています。
2020年に約8,000万人であった生産年齢人口は、2050年には5,000万人を
下回ると予想されており、出生数を考えると、この想定よりもさらに下回る可能性も
あります。
そこで今、注目を集めているのが外国人材の「受け入れ」です。
厚生労働省がまとめている2020年10月末時点での日本における外国人労働者数は
約172万人で、約90万人であった2015年時点の倍近くになっています。
新型コロナウイルス感染症の影響で伸び率は鈍化していますが、政府も
積極的に受け入れを推進しており、今後受け入れが加速することは間違いありません。
ダイバーシティ&インクルージョン推進において、以前から推進されている
女性活躍ですら遅れている日本企業ですが、今後はさらに遅れている
外国人材の受け入れを進めなくては、人口減少やグローバル化に対処できません。
外国人材に対して見ないふりをしたり、知らないままでいることはできないのです。
そこで今回のコラムでは、外国人材の中でも「高度」外国人材に注目して、
受け入れの現状やメリット、定着・育成施策をご紹介します。
高度外国人材とは
現在、日本における外国人労働者数172万人のうち、実は約20%が
高度外国人材と呼ばれる方たちです。
近年話題の特定技能実習生が約23%ですので、意外と多くの高度外国人材が
日本で活躍しています。
ちなみに、残りの約57%は、学生や永住者などです。
高度外国人材とは、高い技術を持ち、専門性の高い職種に就いている
外国人のことです。
内閣府の定義によると、高度外国人材とは
「国内の資本・労働とは補完関係にあり、代替することが出来ない良質な人材」であり、
「我が国の産業にイノベーションをもたらすとともに、日本人との
切磋琢磨を通じて専門的・技術的な労働市場の発展を促し、
我が国労働市場の効率性を高めることが期待される人材」 とされています。
では、専門的・技術的といわれる仕事とは、どのような仕事・職種なのでしょうか。
全てを挙げることはできませんが、代表的な仕事は研究者、医師、
企業の経営者・管理職、語学教師などです。
そして、「技術・人文知識・国際業務」という仕事も含まれています。
具体的には、システム設計や機械設計、電気・電子生産技術職、営業職、接客、
マーケティング、商品開発、人事・総務、アプリケーション開発、社内SEなどで、
非常に幅広い範囲の仕事が専門的・技術的とされています。
高度外国人材受け入れの現状
現在、高度外国人材の多くは次のような業界で活躍しています。
・金融
・建設、土木、電気設備などのインフラ関係
・IT
・エレクトロニクス
・メディア
・メーカー
高度外国人材に期待されている仕事の範囲が非常に広く、幅広い業界で
受け入れが進んでいますが、日本企業側の受け入れ体制はまだまだ整っているとは
いえません。
たとえば留学生にのみ絞ってみたときに、約65%の留学生が日本での就職を
希望していますが、実際の就職率は35%程度にすぎないといわれています。
実際、株式会社ディスコが2020年に実施した調査では、
回答した494社のうち約35%の企業しか外国人留学生を採用しておらず、
今後採用予定があると答えた企業も40%弱と低迷しています。
ダイバーシティ&インクルージョン推進の重要性が叫ばれて久しく、
政府も高度外国人材の受け入れを積極的に進めようとしていますが、
思ったように進んでいないのが現状といえます。
理由には、入社後に人材の能力を活用、マネジメントできる日本人管理者の不足や、
言語の違い、日本でのキャリア形成の難しさが挙げられます。
さらに、長時間労働をはじめ、そもそも日本企業で働くということに対する魅力が
欠けているという指摘もあります。
企業は、高度外国人を受け入れるメリットを理解し、受け入れ、定着させる努力が
必要とされているのです。
高度外国人材受け入れのメリット
高度外国人材の受け入れには、生産年齢人口減少にともなう労働力減少を
補うためだけではなく、企業や組織において様々なメリットがあります。
たとえば、
・海外との取引におけるネットワーク構築や拡大
・外国籍人材ならではの能力・発想を取り入れることができる
・外国人向けサービス需要の高まりに対応するなど、ビジネスの競争力強化につながる
・国籍に関係なく優秀な人材を獲得できる
・日本人社員に外からの刺激を与えられる
などが挙げられます。
簡単にまとめてしまうと、企業の競争力を強化するメリットがあるといえます。
新型コロナウイルス感染症の影響でリモートワークが当たり前になったこともあり、
人材移動の国際化は年々進んでいます。
高度外国人材の国際的獲得競争は過熱しており、今から手を打たないと、
日本企業の国際競争力はこれまで以上に落ちていく可能性が高いのではないでしょうか。
高度外国人材受け入れの課題
高度外国人材受け入れで最も大きな課題は、「定着」です。
2019年9月にパーソル総合研究所が発表した、「外国人雇用に関する
企業の意識・実態調査」によると、特に従業員の定着率が高い大企業において、
外国籍の社員が日本人社員よりも定着しづらいことが分かっています。
海外に住む外国人のためのコミュニティ形成支援サイト
「インターネーションズ」が、毎年まとめているランキング
「外国人が住みたい・働きたい国ベスト・アンド・ワースト」の
2021年1月での調査でも、日本はワースト6位で、特に「定着のしやすさ」の項目では
59か国中58位でした。
その理由として、高度外国人材の早期離職につながる2つの大きな課題は、
1.入社前の相互理解の甘さ
2.入社後のビジネスコミュニケーションでのストレス
です。
【入社前の相互理解の甘さ】
採用~入社前の間に必要な準備というと、在留資格や住まいに関するものなど、
最低限やらなくてはいけないことにだけ目が向きがちですが、早期離職を
防ぐためにはこの段階から企業は気を付けなくてはいけません。
入社前に企業と採用した高度外国人材の認識が合っていないと、
入社後「こんなはずじゃなかった」となり、早期離職につながります。
キーワードは、他者理解と自己理解です。
他者理解は異なる文化や価値観に対する理解なのでイメージしやすいと思います。
日本人同士であってもそれぞれ違うのは同じですが、特に外国籍の人材は
日本の文化や価値観とは違う環境で育っています。
他者理解としては、相手の文化や価値観を知ろうという姿勢は重要ですし、
高度外国人材側にも日本や自社のことを理解してもらわなくては良い関係が築けません。
一方で自己理解とは、自社が「なぜ」高度外国人材を採用したのか、
ということへの理解です。
人手不足だから、日本人が採用できないから、という理由で高度外国人材の
採用に踏み切ることが良くありますが、多くの場合失敗します。
特に終身雇用制度が長く続いてきた日本企業では、「採用目的」と「キャリアパス」を
明確にしていないことが多々あります。
新人だから3年は我慢して当たり前、ではあるのかもしれませんが、
終身雇用の概念がない、もしくは希薄な高度外国人材にとっては、
「なぜ」自分が雇われたか分からないことは大きなストレスです。
採用された企業で生涯働こうと思ってくれていたとしても、
「採用目的」と「キャリアパス」を提示されないと早期離職につながります。
まずは、企業側が自社のことをよく理解し、「なぜ」の部分を説明できるように
することで、早期離職を防ぐことにつなげられます。
【入社後のビジネスコミュニケーションでのストレス】
入社後の問題として最も多く挙げられるものが、コミュニケーションについてです。
日常会話とビジネスコミュニケーションは違います。
日本語能力試験で一番難しいレベルであるN1であったとしても、
コミュニケーションが難しい場合もありますし、外国語が堪能な日本人社員の在籍は
企業単位で見ても少数派です。
コミュニケーションが円滑に進まず、チームでの仕事に支障が出ることは、
高度外国人材だけでなく、日本人社員のモチベーションも大きく下げてしまいます。
特に問題になりやすいシーンには、次のようなものがあります。
・業務指示、依頼、注意
・休暇依頼があったときの対応
・食事などに誘うとき、断るとき
・雑談
・出退勤、残業に関する話題
・メール、電話応対
・会議でのディスカッション、社内外に対するプレゼンテーション
このようなシーンのときに、高度外国人材のことを尊重するだけでなく、
自社の特徴を理解してもらい、相互に尊重しあえる関係を築くことが、
高度外国人材と日本人社員双方のモチベーションを上げることにつながります。
そのためには、日本人社員は高度外国人材が分かりにくい表現の仕方を知り、
「やさしい日本語」のような伝わりやすい言葉使いでのコミュニケーションを
習得することが必要です。
高度外国人材側にも配慮ある話し方や聞き方など、日本企業で働くうえで
必要なコミュニケーションを学んでもらうことで、よい関係構築につながります。
高度外国人材定着支援研修事例紹介
高度外国人材の受け入れは、政府が積極的なこともあり、今話題になっています。
一方で採用には注力していても、たとえば
「日本の大学に留学していたから大丈夫だろう」と、日本語で日本人社員と同様に
社内だけで研修を実施し、仕事をさせたらすぐに離職してしまった、
というお悩みが増えてきています。
高度外国人財の採用には非常に大きな労力とコストが発生します。
受け入れについては、少なくとも最初は外部の研修も取り入れたほうが、
結果的にコストがおさえられる場合が多いです。
今回のご紹介する事例は、採用した高度外国人材を即戦力化し、定着することを
目指して実施した研修です。
管理職を含めた日本人社員と外国籍社員にそれぞれコミュニケーションや
チームビルディングを学んでもらう内容です。
無料セミナーの動画も配信しておりますので、是非ご覧ください。
https://youtu.be/H5uXgnh8x30
【研修事例】
テーマ:
高度外国人材の即戦力化&定着支援
ねらい:
・高度外国人材が定着し、能力を発揮できるようにする
・人事部、受け入れ部署、高度外国人材間のコミュニケーション円滑化と
チームビルディング
内容:
①高度外国人材受け入れ準備 PART1
受け入れをする日本企業の管理職や経営層に向けて実施します。
高度外国人材が日本に住み、働くうえで必要な準備の全体像をインプットします。
また、採用目的を明確にし、キャリアパスを提示するなど、高度外国人材が
定着するうえで必要なことや、コミュニケーションの取り方についても学びます。
②高度外国人材受け入れ準備 PART2
高度外国人材が配属される部署の社員に向けて実施します。
異文化の理解や異文化間コミュニケーションについて重点的に学び、
受け入れのレディネスの醸成と、実践に向けた準備をおこないます。
③高度外国人材内定者研修
高度外国人材に対して実施する研修です。入社動機やキャリアプランを再確認し、
受け入れ企業の文化や制度についてインプットします。
また、自己紹介や日常ビジネスで使用する話し方や聞き方、報・連・相の仕方、
会議でのディスカッションやプレゼンテーション、メールや報告書の書き方など、
業務上の基本として求められるビジネスコミュニケーションスキルを習得します。
④チームビルディング
管理職・経営層・高度外国人材混合でおこないます。
業務指示、注意や謝罪、報・連・相、会議、雑談などの実際のシーンを再現し、
一緒に働くイメージを具体化していきます。
やさしい日本語を意識した会話や分かりやすい指示の出し方など、研修後すぐに
そのまま使えるノウハウを学びます。
⑤日本語補強&カウンセリング
研修後も高度外国人材の業務上や生活面での悩み、相談を受けることで、
メンタルサポートを実施し、定着に向けて支援します。
弊社では、個社ごとに完全オーダーメイドで研修をご提案しております。
パートナーとして協力いただいている外部トレーナーが400名以上おり、
個社ごとに合った研修をプロデュースしております。
グローバル化を支援する研修のバリエーションも豊富です。
本記事を参考に、是非自社に合った高度外国人材受け入れ研修を実施し、
ダイバーシティ&インクルージョンを推進してはいかがでしょうか。