行動変容は、研修の成果として以前から求められ続けているものです。
マインド系の研修でもスキル系の研修でも、日常への定着が求められます。
せっかく研修を実施したのに、受講者の方に期待していた行動変容が起こらず、
また、それに対する有効な対策が浮かび上がってこないことに悩んでいる
研修担当者の方も多いのではないでしょうか。
「研修の効果をどのように測定すべきか」は、研修にまつわる大きなテーマのひとつです。
企業における研修は、マインドセットや行動変容、知識習得、スキルアップ、
モチベーションの向上などを通じて、最終的には業績向上につなげるために
実施されることが多いです。
研修評価の際によく用いられる、以下の図で有名な
カークパトリックの4段階評価でも、「業績貢献」が一番高いレベルに
設定されています。
しかし「業績貢献」は、研修以外の影響もあり、研修効果として測定することは困難とされています。
そこで今回のコラムでは、研修担当者の方に向けて、レベル3に設定されている、
「行動変容」を測定するための研修効果検証アンケートを活用した事例を紹介します。<>

研修の効果を見える化する
研修の効果を検証するためにおこなわれる最も代表的な手法が、
研修直後に実施されるアンケートです。
研修直後のアンケートは、レベル1の「満足度」を測るために使用されることが
ほとんどです。
受講者満足度を測ることは、研修内容の課題や改善点を見ることができますので、
非常に有用です。(この目的でのアンケートでは、研修担当者満足度を測ることも有用です)
たとえば、
・研修内容は理解しやすかったですか
・トレーナーの進行や説明は分かりやすいものでしたか
・研修内容に満足しましたか
・研修内容を実務に活かせそうですか
・テキストなどの資料は理解しやすかったですか
・この研修を別の方にもおすすめしたいと思いますか
などの質問が代表的です。
点数を付けて評価してもらうことはもちろん、定性的なコメントも
記入してもらうことで、より詳細に満足度を確認することができます。
レベル2の「理解度」を測るために実施される代表的な手法が、
研修内容に関するテストです。
研修直後に実施するものもあれば、少し期間を空けて実施するものもあります。
ハラスメントや業務知識、コンプライアンスなどの知識をインプットする
タイプの研修では、テストの実施は特に有効です。
最近では、LMSなどの学習管理システムを活用したe-learningが普及しており、
テストに合格しないと次のステップに進めなかったり、回答を間違えた場合には
すぐに解説が表示されるなどの工夫がなされています。
また、理解度を測るものではありませんが、理解を促進するものとして、
研修後に研修内容のリフレクションをおこなったり、事後課題やレポート作成も
活用されています。
さて、ようやく本題ですが、ここからレベル3の行動変容を測り、
促す取り組みについて紹介します。
研修直後に変容した行動は、すぐにそのまま定着するわけではありませんので、
1か月後、3か月後、6か月後など、一定期間にわたり定点観測する必要があります。
アンケートのみを実施して結果をフィードバックする場合もありますし、
研修で作成したアクションプランをもとに、事後課題やレポートにも
取り組んでもらう場合もあります。
行動変容を追いかける場合には、研修実施前に研修の目的を周知し、
行動目標を決めておくことも重要です。
ロバート・ブリンカーホフの「4:2:4 の法則」で言われるように、
研修の事前準備が研修効果に与える影響を無視することはできません。
また、アンケートに回答してもらう方は研修受講者だけでなく、
その上司の方にも回答してもらうことが理想的です。
行動変容の内容やそれが起きたきっかけを考察することは、
研修受講者の方からの回答だけでも可能ですが、上司の方の意見と合わせて
比較することで、起こった行動変容が研修前に決めた行動目標に合ったものかなど、
より詳細に確認することができます。
質問項目は回答者の方の負担にならないよう、アンケートの目的を限定することで、
少ない項目数になるよう設定します。
たとえば、
・研修受講前と比べて研修で学んだ〇〇は実践できていると思いますか
・研修後、行動が変化したことはありますか
・さらに身に付けたい知識や技能はありますか
・行動変容が起こった理由やきっかけを教えてください
・研修で学んだ〇〇について、更に実践してほしいと思うことはありますか
のような質問の中から2~4問程度に絞って設定します。
点数評価をしてもらうことで、定量的に行動変容があったかを判断することに加えて、
定性的なコメントを集めてどのような変化だったのかを考察します。
この定性的な分析が最も重要で、自由記述欄に記入されたプロセスや行為、
行動から、一般化できるような抽象的な概念を引き出します。
そうすることで、数値化された表層的な分析アプローチだけでなく
(それも非常に重要なアプローチです)、なぜそれが起きたのか、
定性的に回答の背景を考察するアプローチができるようになります。
こうした分析を定期的におこなうことで、実施した研修が目指す行動変容に
つながっているのかを確認することはもちろん、実務現場での状況や
次回の研修に向けた改善プランの作成に役立てることができます。
研修後の行動変容につなげる事例紹介
今回は、最近弊社でおこなった研修後のアンケート実施事例を一部紹介します。
リーダーシップ研修をおこない、研修で目指す行動目標のひとつを
「メンバーに対して積極的なコミュニケーションをおこなえるようになることで、
メンバーを巻き込み協働できるようにする」という、
チームビルディングに関するものにした研修です。
アンケートは研修直後に加え、研修後1か月後と3か月後におこない、
そこで得た結果をもとに実務現場で起こっていることを確認し、
次回の研修内容をブラッシュアップしていくことにつなげたいと考え実施しました。
1か月後のアンケートでは、受講者と上司の方それぞれに、
・研修受講前と比べてチームビルディングは実践できていると思いますか
・その理由を具体的に教えてください
という質問をし、3か月後のアンケートでは、
・1か月前と比べてチームビルディングは実践できていると思いますか
・その理由を具体的に教えてください
・行動変容が起こった理由やきっかけを教えてください(受講者のみ)
・更に実践できるようになってほしいと思うことを教えてください(上司のみ)
という質問をし、回答にご協力いただきました。
定量評価は4段階でおこないました。(4が実践できている、1が実践できていない)
定量評価の結果は次のグラフの通りで、受講者よりも上司の方のほうが
良い点数を付ける傾向にあることがわかります。
※この傾向は1か月後でも3か月後でも同様ですので、この企業様の
特徴であるとも考えられます。


この定量分析だけでは、どのような内容で、どの程度の行動変容が起きているかは
わかりませんので、回答していただいたコメントを元に定性情報を質的に分析し、
要素を抽出しました。
その内容を一部ですが紹介します。

1か月後では、チームビルディングへの意識向上や、コミュニケーションの
増加にとどまっていたのものが、3か月後ではチームでの具体的な行動や
メンバーの巻き込みがみられ、目指す行動変容が現れ始めていることがわかります。
また、行動目標については双方同様の意識を持てているものの、
上司の方のほうが具体的に行動について評価していることがわかり、
上司の方が高めに点数を付けた背景が見えました。
受講者に対するフィードバックではこのことを正直に伝え、
受講者に自信をつけてもらうよう活用を提案しました。
表にはありませんが、ある特定の上司と受講者の方との間で意見の
相違がみられることもわかり、個別にフォローを検討するきっかけにもなりました。
一方で、チームビルディングの更なる課題として浮かび上がってきたものが、
チームを超えた組織としての横連携や、年上メンバーの方との
コミュニケーション改善です。これらの課題をもとに、
次回以降の研修実施の内容のブラッシュアップを図ることが可能になりました。
行動変容が起こった理由やきっかけには
・社内イベントの実施
・プロジェクトを任されたことや実務でのつながりがみえてきたこと
・上司やオブザーバーの方からの日常的なアドバイスがもらえたこと
・定期的な研修事後報告
などが挙げられました。
このような内容をもとに、次回研修実施前に研修の目的や行動目標を見直し、
研修内容のブラッシュアップや研修後の行動変容を定着させる取り組み改善にまで
つなげることで、研修効果を高めるためのPDCAが回せるようになりました。
せっかく研修を実施するのであれば、その効果を出来る限り高めていきたいですよね。
弊社では、個社ごとに完全オーダーメイドで研修をご提案しております。
パートナーとして協力いただいている外部トレーナーが400名以上おり、
個社ごとに合った研修をプロデュースすることに自信を持っています。
また、このような研修後の取り組みも合わせて実施しております。
本記事を参考に、是非自社に合った研修を実施し、研修後の行動変容を
定着させる取り組みをおこないませんか。