みなさんは「中間管理職」という言葉に、どんなイメージを持っていますか?
「上からの命令と、下からの不満で板挟みになる」
「管理職ということで残業代もつかずに、仕事に忙殺される」
「部下の管理がメインの仕事になり、以前のように現場仕事の面白みが感じられなくなる」
中間管理職とは、組織の中の役職の位置付けを表した言葉です。
具体的には部下を管理する立場でありながら、その自分の上にも別の管理職が存在する
というポジションであり、主に課長や係長の立場がそれにあたります。
この言葉の意味からすれば、組織の中での立ち位置を示すだけのものですが、
中間管理職という言葉が持つイメージにはネガティブなものが多いです。
もちろん実際の中間管理職の方たちが、このイメージのとおりかと言えば、
それは人それぞれですが、管理職という役柄上、今までやってきた仕事とは質の違うものに取り組んでいくため、管理職になる前とは違った大変さがあることは明らかです。
そして、この中間管理職にいるもっとも多い年代が40代の人たちです。
今回のコラムテーマは40代社員に必要なキャリアデザインです。
管理職という立場や、仕事以外のライフイベントに直面していく40代社員にとって、これから必要な将来の目標や組織の中で持つべきマインドについて解説します。
40代社員が会社・組織から求められているもの
改めて言うまでもありませんが、社員の年代を若手・中堅・ベテランで分類すれば、
40代社員はベテラン社員に分類されます。
仮にその人が中途採用だったとしても、それまでの社会人経験や前の会社で得た知識や経験があるため、会社の在籍年数に関係なくみんなのお手本になれる人たちです。
そして会社もそのベテラン社員の知識や経験が、組織全体に活かされることをとても期待しています。
この会社からの期待は、
リーダーシップやフォロワーシップの発揮と言い換えることができます。
■40代ベテラン社員に期待するリーダーシップ
リーダーシップとは、一般的に統率力や指導力を意味し、組織のリーダーや管理職、またはそれにあたるポジションの人が求められるものです。
しかし、ベテラン社員に期待するリーダーシップは、ポジションや与えられた仕事の枠に
とらわれるものではありません。
問題が発生した際の初動の早さ、課題解決に向けた積極的なアイデア出し、責任を持って
仕事に取り組む姿勢など、立場に関係なく発揮できるもので、それはみんなが見習うべき
基本動作のお手本ともいえます。
またそれらが発揮されるとチームも自然と良い雰囲気となり、チームの安心感向上や活性化にもつながります。
このように与えられた仕事の成果だけでなく、社会人としてまたは職業人として手本となる振る舞いで周りを引っ張っていくことが40代のベテラン社員には求められています。
■40代ベテラン社員に期待するフォロワーシップ
フォロワーシップとは、リーダーや管理職が示す方向性とその推進において、
リーダーにしっかり追随し推進の手助けをしていく姿勢です。
フォロワーシップを発揮するためには、まずチームや会社が何を目的とし、どこに向かって進んでいるのか、現在どんな課題に直面しているのかなどを理解する必要があります。
そしてその活動がスタートした際は、それを一番初めに実践する人、随時フィードバックし計画時の見落としなどを補完する人、ついていけない他のメンバーのヘルプをする人などになり、チーム全体の成果に貢献します。
個人目線ではなく、チーム全体の目線で考え行動する必要があるため、これまでのチームのなかでさまざまな仕事をしてきたベテラン社員にとっては、自身の経験を最大限に活かせる機会と言っても過言ではありません。
このリーダーシップやフォロワーシップがうまく発揮できている人は、周りのメンバーからも感謝され頼りにされる存在となるため、管理職やリーダー、サブリーダーなどに抜擢される人も少なくありません。
しかし、正式に管理職などの役割が与えられると、それまで自主的に発揮していたリーダーシップやフォロワーシップは会社から課せられた義務となり、加えて新たな管理業務をこなす必要があるため、途端に苦しい状況に追い込まれる人もいます。
冒頭で述べた中間管理職にある悪いイメージも、責務となったリーダーシップや
フォローワーシップに苦しめられている人たちの姿です。
40代社員がこれから向き合う仕事以外のライフイベント
40代の人は会社での立場や周囲の期待が変化するだけでなく、仕事以外でもさまざま変化が生じる年代です。
わかりやすい例を言えば「時間」や「お金」の使い方です。
子どもの学費、家のローン、親の介護など、それまでには無かったものが対象になっていきます。またこのほかにも病気や体力低下など、これまでさほど気にならなかったものが、気になるようになっていきます。
これらの変化は、これまで仕事や目の前の出来事だけに集中してきた自分に対して、
10年後や20年後に向けて考えるきっかけを与えてくれます。
また、40代半ばも過ぎてくると、いよいよ50代になる自分が見え始めてきます。
50代になっても今の仕事に対してモチベーションを維持できるのか?
そもそも今のように働き続けられるのか?
このまま50代を迎えてしまって良いのだろうか?
そうしたモヤモヤした気持ちで日々を過ごしている人もいます。
心のモヤモヤを晴らしてくれる「キャリア自律」の意識
自分の今の状態や将来についてモヤモヤしたものを感じている40代社員が、
そのモヤモヤを解消するためには、その不安や悩みの根本となっているものを明らかにするしかありません。
具体的には、
「自分はこれからどうしたいのか」
「その想いに対して現状はどうなっているのか」
「周りからは何を求められているのか」
「その周りからの期待に自分はどんな感情を持っているのか」
これらを紙に書き出したり口に出してみて言語化することです。
この言語化をおこなうと、自分が何に対してモヤモヤしていたのかがはっきりします。
また、その原因に対して、どう向き合えば良いのかも、
より客観的に考えられるようになります。
この言語化をしないまま、とりあえず目の前の仕事を頑張るという人もいますが、
その頑張りは一時のもので長続きしなかったり、周りとの協調もうまくできず、
自分だけが空回りする結果で終わってしまうことがよくあります。
この自分自身と向き合い、周りからの期待や自分が置かれている状況を正しく把握する。
そしてこれから先に何が必要かを考え、それに向かって継続的な努力をしていくことを
「キャリア自律」といいます。
これに似たもので「キャリア自立」という言葉があります。
これは周りからの支援や支配を受けずに、自分の力だけで仕事をしてキャリア形成を
図るという意味です。
将来的には会社や組織からも離れ、独立したいという人にとっては、このキャリア自立も
意識する必要がありますが、それよりも将来の目的や周りとの関係を大切にしながら、自分自身とキャリア形成をコントロールしていく「キャリア自律」のほうがより大切なものと
いえます。
また、40代社員が求められているリーダーシップやフォロワーシップについても、
このキャリア自律の意識がどれだけあるかによって、その発揮される度合いが大きく
変わります。
なぜなら、キャリア自律の意識が高い人は、今の仕事や与えられたポジションから得られる評価や経験と、自身のキャリア形成のために必要なものとの結び付けができています。
自身の理想的なキャリア形成のためにするアクションが、自然とリーダーシップや
フォロワーシップの発揮に繋がっていきます。
「キャリア自律」と
「40代社員がこれまでの殻をやぶりステップアップする」ための支援
40代社員へのキャリア自律支援として会社が出来ることは、
彼らが自身のキャリアについて考える機会を作ることです。
具体的には、
キャリアデザイン研修の実施、定期的なキャリアコンサルタントとの面談などになります。
ここで会社側が特に認識しなければならないのは、40代社員が自身のキャリアについて
考える際、会社側の意向を押し付けないということです。
会社側からすれば、40代社員にこれまで以上リーダーシップやフォロワーシップを
発揮してもらいたいため、具体的にどんな期待をしているのか、40代社員がこれから
どう振る舞っていけば会社が評価するのかを伝えたいところです。
しかし、40代社員がそれを聞いてしまうと、それらはあくまで会社から与えられた
ミッションのひとつ、または会社が求めている達成目標として受け取られ、
「会社から与えられた目標は無理のない範囲で頑張るもの」として整理されてしまいます。
まずは40代社員が自分自身の中からその答えを導き出すことが大切です。
40代社員の彼ら自身のためになり、またそれが会社のためにもなること、
それは彼らがこれまでの自分の殻を破り、新たなステージにステップアップすることです。
そのためには、彼ら自身が今までにはなかった新たな挑戦をする必要があります。
これは人から指示されたり、与えられるものではありません。
彼らがこれまでの経験を振り返るなかで、
「挑戦してみないとわからない価値がある」
「失敗してみないと得られないものがある」
「少しずつでも続けてきたからこそ見える光景がある」
ということに改めて気づき、その気持ちと共にこれからの自分を想像することです。
これが自分の殻を破る新たな挑戦の礎になってくれます。
自分がこれからどうしたいのか、周りから何を期待されているのか、今の自分に何ができるのか、これらについて考えてみることはとても大切なことです。
しかし、今の場所からステップアップしようと思ったら、新たな挑戦をする自分をイメージし、その行動の一歩を踏み出すことが何よりも大切です。
キャリア研修事例紹介
40代社員のキャリア自律を助け、新たな挑戦や会社への影響力発揮につなげるために、
会社としてできることのひとつに、「キャリア研修」の実施があります。
そこでここからは、弊社で実際に実施したキャリア研修の事例をご紹介します。
演習も含めた2日間の研修事例です。
【研修事例】
テーマ: 40代からのキャリアデザイン
ねらい:
・自分の生き方や個性、価値観を活かし組織の成果に結びつけていくこと
・組織の中で自分がリーダーシップを発揮する場を自分で作り出していくこと
・職場で自分がどのように活躍できるかを具体的にイメージし、
自身の原動力に変えていくこと
内容:
<1日目>
① 内省への導入〜リーダーシップ
仕事をするうえでの「リーダー」と「マネージャー」という2つの役割を認識し、
自分のリーダーシップについてトレーナーと一緒に考えます。
② 現実を見つめる<現在の仕事、現在の自分>
現在の自分の仕事について、コアとなっているもの、行動の境界線となる枠について考え、そこからの気づきを共有します。
③ 気づき<自分の視点>
これまでの自分の経験からできた自分のものの見方について考えます。普段、思い込みや決めつけになりがちなことを自覚し、他のものの見方もあることを認識します。
④ 想い<仕事の意義、過去の自分、価値観>
自分が持つ仕事の意義について考えます。また過去の自分にもフォーカスし、自分にとって何が大切なものなのか、自分の価値観を感じ取り、それを言葉にします。
<2日目>
⑥ オープニングディスカッション
1日目の研修内容についてディスカッションを行います。
⑦ 想い<仕事の意義、過去の自分、価値観>
自分の価値観を展開し、内にある想いを掘り起こします。
また、未来の自分を想像し、成し遂げたいこと、実現したい未来について考えます。
⑧ 行動
これまで持っていた自身の枠を越えて行動する自分と、その枠の中で行動する自分の両方について考え、自分自身の行動のメカニズムを分析します。またその行動の障壁となる
自分自身の枠を取り払う方法について、みんなで知恵を出しあい考えます。
⑨ スモールチャレンジ
これからの自分のために、明日から始めること、今日で終わりにすることを考え、
これから先の自身のコミットメントとして発表します。
⑩ クロージング
質疑応答、2日間の講義とワーク内容を振り返りながら、自身のキャリア形成において
何が必要なのかを再認識します。
弊社では、個社ごとに完全オーダーメイドで研修をご提案しております。
パートナーとして協力いただいている外部トレーナーが400名以上おり、
個社ごとに合った研修をプロデュースしております。
40代社員のキャリアをテーマにした研修バリエーションも豊富です。
本記事を参考に、是非自社の目的や課題に合った研修を実施してみてはいかがでしょうか。