キャリア自律が求められる背景とは

キャリア自律」とは、企業ではなく個人が主体的に自分の価値観を理解し、
仕事の意味を見出し、自律的に「キャリア開発」を行っていくことを指します。
「キャリア開発」とは、中長期的な計画に基づいておこなわれる、
社員一人ひとりのスキルアップや職務能力の向上に関連した取り組みのことです。

ビジネスを取り巻く環境の変化が早く、先が見えないVUCAの時代において、
企業が社員のキャリア開発を計画的におこなうことは困難になってきています。

実際に終身雇用や年功序列といった従来型の雇用スタイルも変わってきており、
企業が社員のキャリアをコントロールし、その見返りとして雇用責任を負うことは
もはや一般的ではありません。

個⼈にとっても、⾃分⾃⾝の羅針盤を持ち、⾃分の⼈⽣の舵は⾃らがとるという
主体的な姿勢が、ますます求められています。
新卒であっても特殊スキルを持つ人材に対して高い初任給を設定する企業や、
ジョブ型雇用を導入する企業が増えてきたことは、その変化の表れといえます。

このように外的環境が大きく変化する中、個人のキャリアという視点では、
キャリアのレールが引かれなくなったことで、「社内出世」ではなく「社会出世」を
目指して、自分で自分のキャリアをアップさせていかなくてはなりません。

また、企業の視点においては、これまでのように従来のビジネスを
「どのように(HOW)」効率的におこなうかを考えられる人材ではなく、
変化の激しいビジネス環境の中で、「なにを(WHAT)」するかを考えられる人材を
採用・育成する必要があります。

キャリア自律を進めることで社員一人ひとりが自ら考え、主体的な行動につながり、
高いパフォーマンスと生産性が期待されており、現在、人事関係者の注目を集めています。

キャリアに関する理論的な枠組み

ひと言で「キャリア」と言っても、幅広い意味を持つワードですので、
キャリア自律と言われても具体的なイメージを持ちづらいと思います。

キャリア自律とは、自分で職業を選択したり、起業することなのでしょうか。
それとも自分のスキルを伸ばしたり、新たに獲得することなのでしょうか。
そこを整理するために、まずはキャリアに関する理論をいくつかご紹介します。

キャリア論には大きく分けて、「静的なモデル」と「動的なモデル」の
2種類が挙げられます。

前者はキャリアをジョブマッチングの問題に帰結させる考え方で、
後者はキャリアを形成するプロセスをダイナミック(動的)にとらえる考え方です。

【静的なモデル】
~ホランドの「職業選択理論(六角形モデル)」~
職業選択理論(六角形モデル)は、アメリカの心理学者ジョン・L・ホランドが
提唱した、本人の興味と仕事の特性を結び付けたモデルです。
六角形とあることから分かるように、以下の6つのキーワードに軸を設定し、

・現実的
・研究的
・芸術的
・社会的
・企業的
・慣習的

自分の興味や性格がどの軸にあるかを考えます。
たとえば「現実的」であれば秩序のある組織的な活動を好むため、
技術関係の仕事に向いているとされています。

また、「慣習的」なタイプの人は、データなどの情報を体系的にまとめるような
職業に向いているとされています。

このモデルは、大学生が初めて就職する時などに、自分がどのような
職業に合っているのかを考える場合に、世の中にある職業の選択肢の中から
ヒントを得るために使われています。

ただし、特に現代ではデータベース化されているそれぞれの仕事の中身や
求められる能力は、経営環境や企業風土、顧客ニーズの変化によって
たとえ同じ職種や同じ仕事でも異なっており、このようなマッチングモデルが
機能しづらくなっています。

~シャインのキャリアアンカーモデル~
キャリアアンカーモデルは、アメリカのマサチューセッツ工科大学の
エドガー・シャインによって提唱された、より職業選択の抽象性を高めたモデルで、
個人がキャリアを選択していく上で絶対に譲れない価値観や欲求、能力などを
人生の錨(アンカー)として例えたモデルです。

・経営管理志向
・専門志向
・安定志向
・自律志向
・起業家志向
・社会への貢献
・全体性と調和
・チャレンジ

の8つのタイプのうち、どれかを重視し、自分らしいキャリアを
作り上げていくのかを考えられて作られたモデルです。

職業選択が抽象的になり、志向性が高い分、先ほどのホランドの職業選択理論による
ジョブマッチングより有効と考えられていますが、大学生など
キャリア形成のイメージが具体的に持てていない人材に当てはめる事は
適切ではないとされています。

【動的なモデル】
~ニコルソンのキャリア・トランジション・サイクル~
トランジションモデルは、キャリアの節目をどう乗り越えて成長していくのか、
節目に注目したプロセスモデルです。
個人のキャリア発達の過程には、様々な出来事(転機)が連続して起こることに注目し、
その出来事(転機)を上手に捉え、対処することが大事とする考え方です。

出来事(転機)は、準備→遭遇→適応→安定化の順番でサイクルが回っているとされ、
キャリアの節目をサポートする方法論として活用されています。

たとえば、
・準備:就職して部署に配属される
・遭遇:その部署で様々な課題に直面する
・適応:人間関係を構築し、部署での仕事に慣れ始める
・安定化:部署での仕事に慣れて落ち着いていく

このサイクルがうまく回らなければ、どの時点に問題があるのかを確認し、
改善につなげていきます。

~クランボルツの計画的偶発性理論~
計画的偶発性理論は、スタンフォード大学のジョン・クランボルツ教授により
発表されたモデルで、数百人に上るビジネスパーソンのキャリアを分析した結果、
キャリアの80%は予期しない偶然の出来事によって形成されているという
実験結果をもとに発表されたものです。

つまり、将来のキャリア目標を明確に定め、そこから逆算して計画的に
キャリアを考えていくのは現実的ではなく、予期しない偶然の出来事に
大きく影響されるという考え方です。

ただし、自分にとって好ましい偶然の出来事がより起こるように、日ごろから
能動的な行動をすることが重要とも考えられています。
自律的にキャリアを切り開いていこうと思ったら、キャリア形成にとって
好ましい偶発的な出来事を自分から仕掛けることが必要だとされています。

変化の激しい時代にいる現代のビジネスパーソンにとっては、こうした考え方を
示唆し、キャリア自律をうながすことが、今後ますます重要になってくると考えられます。

キャリア自律を成功させるためのポイントとは

ビジネスパーソンのキャリア開発の取り組みを分類すると、「しくみ・制度の整備」を
中心とする“企業のキャリアマネジメント”と、
「個人のモチベーションアップのための施策」を中心とする、
“個人のキャリアプランニング”の2つに分けられます。

キャリア開発の取り組みを成功させるためには、この2つの取り組みを
平行して継続的に推進することが必要です。

【企業のキャリアマネジメント】
・能力開発と人事制度の連動:キャリアパスを明確にし、学習意欲を向上させます。
・FA制度・社内公募制度の導入:社員のモチベーションを維持し、
活力ある企業風土を作ります。
・目標管理におけるキャリア面談の実施:個人を尊重し、風通しの良い職場風土を作ります。

【個人のキャリアプランニング】
・自己のキャリア形成力強化:自己分析により強み・弱み・価値観を把握し、
主体的な能力開発につなげます。
・自律した個人としての成長:自己のライフプランを設計し、個人としての成長を
描きます。
・自社理解:役割認知を通じて自己成長目標を整理し、周囲へ積極的な働きかけが
できるようにします。

各世代でのキャリア研修のテーマ

個人のキャリアプランニングを実施するうえで、最も一般的におこなわれている
手法の一つに、キャリア研修が挙げられます。
キャリア研修の対象は全世代です。それぞれの世代やキャリアに合わせて、
テーマが変わってきます。

以下の表は、世代別のキャリアテーマの一例をまとめたものです。
キャリア研修は、世代ごとに様々なテーマでおこなわれています。

キャリア研修事例紹介

今回は、その中でも最近特にご相談が多い、若手社員のキャリア研修事例を紹介します。

この研修は自分の仕事の見方を変え、持ち味や価値観を活かすことを目的にしています。

弊社では、個社ごとに完全オーダーメイドで研修をご提案しております。
パートナーとして協力いただいている外部トレーナーが400名以上おり、
個社ごとに合った研修を実施しております。
本記事を参考に、ぜひ、自社に合った研修を実施してみてはいかがでしょうか。

【研修事例】
テーマ:
若手向けキャリア研修 ~ジョブ・クラフティングで仕事を楽しむ視点を増やす~

ねらい:
1.これまでを振り返り、自分の持ち味・強み・大切にしている価値観に気付く。
2.自分の仕事の見方を変え、持ち味・価値観を活かせるように仕事を再構築する。

内容:
①成長する若手社員の共通点
若手社員が次のステージで活躍するためのキーワードは、
「自分ごと」「自分らしさ」「コミュニケーション」の3つということを理解します。
自分の頭で考え、自分の言葉で伝え、人を巻き込むことが重要であり、
多くの新入社員や若手社員が成長する背景にはこの3つがあることを、
活躍する人材の事例を通して理解を深めます。

②自分自身を振り返る
これまでの経験をプライベートと仕事、モチベーションの切り口で振り返り、
自身の持ち味や強みを言語化します。
また、モチベーションの持論や仕事をする上で大切にしている価値観を探り出します。

③行動を変えるために見方を変える
リフレーミングの手法を学び、同じ事象でも見方が変わると反応と行動が
変わることを、ゲーム形式のワークで実感します。
自分の中で癖になっている物ごとの捉え方を理解し、無意識の思い込みに気づきます。

④仕事を楽しむ視点を増やす
目の前のやらなくてはいけない仕事、自分に任された仕事を、
自分で創り変えていく手法「ジョブ・クラフティング」を学びます。
「自分らしさ」(自分の持ち味・モチベーション・価値観)を明らかにした後、
「人間関係」「仕事の役割・意義」「業務内容」を組み立て直していきます。
やらされ仕事や上司の命令ではなく、自分らしさを活かし、仕事の一部を
デザインし直すことにより、新たな次のステージを見据えます。

⑤やる気スイッチの違いを体感する
より、他者に影響力を発揮するために、4つのタイプ分析から
コミュニケーションパターンを学びます。
自分自身のコミュニケーションパターンと他者のコミュニケーションパターンの
違いを頭にいれ、どのように接し巻き込んでいくかを考えていきます。

⑥行動計画策定
本日の学びを現場でどのように活かすかを明確化します。
何を目的として自身のどんな強みをどんな場面で活かすのか、
1、3、6ヶ月の期間で区切りアクションプランを設計し、メンバーに宣言します。

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