インクルーシブ・リーダーシップを身につける最初の一歩とは?

近年、職場で多様性を受け入れ、活かしながら組織として成果を出す
ダイバーシティ&インクルージョン(以下D&I)が求められてきています。

D&Iとは、国籍・性別・年齢などの外見的な違いや、価値観・性格・嗜好など内面的な違いも含め、個々のさまざまな違いを受け入れ、認め合い、活かしていくことです。

実際に、経済産業省(2021)が「多様な個を活かす経営=ダイバーシティ経営」として、多様性を経営に活かすことの有効性を提言しています。

また、コクヨの調査(2022)によると、約9割の働く社会人は「勤務先でD&Iの推進が必要である」と感じています。

これらのことから、D&Iの推進を国も奨励しており、企業でも求められていることが
分かります。

しかし、世界経済フォーラム(WEF)が発表した2022年のジェンダー・ギャップ指数に
よると、日本は146か国中116位と、前年までと同様に低い順位でした。
長年D&I推進の重要性が叫ばれ続けていますが、実際には浸透していない現実が見えてきます。

今回のコラムでは、そんなD&Iを職場で実現する手法の一つである
インクルーシブ・リーダーシップ」についてご紹介します。

ぜひ最後までご覧ください。

インクルーシブ・リーダーシップとは

インクルーシブ・リーダーシップとは、
直訳すると包括的なリーダーシップという意味です。

定義としては、「メンバーの多様性を活かしながら組織として成果を出すリーダーシップ」とされています。

それでは、なぜインクルーシブ・リーダーシップはこれほどまでに求められているのでしょうか?冒頭でも簡単にお伝えしましたが、ここではさらに詳しくお伝えしていきます。

まず、近年はVUCAの時代と呼ばれています。
「組織を強くするシェアド・リーダーシップ」のコラムでも取り上げましたが、
VUCA時代とは社会の変化が激しくなってきている時代のことを指します。

すなわち、ビジネスにおいて予測が難しい状況になってきているのです。

そんなVUCA時代でも、企業が持続可能性を高めるためにはイノベーションを生み出し続けなければなりません。その手段として、D&Iの動きが進んでいるのです。

なぜなら、さまざまな価値観を持つ社員が集まることで、イノベーションの創出が期待できるからです。このような背景からD&Iが求められるようになり、多様な人材を雇用する動きが始まりました。

より詳しくD&I推進が求められる理由を知りたい方は、
「ダイバーシティ&インクルージョンが必要とされるのはなぜか」のコラム
ぜひご一読ください。

とはいえ、たださまざまな価値観を持つ社員を集めてダイバーシティな職場にしたとしても、インクルージョンする存在がいなければ組織として成果を上げることができません

特に日本企業において、多様なメンバーの個を活かすことはハードルになると考えられます。これまで日本企業では、均質的な組織を作りそれをマネジメントすることが合理的だと考えられてきました。

均質性に慣れている社員にとって、多様性を認めて受け入れることは容易ではありません。

せっかく多様な個性が集まったとしても、それがかえって仇となり、遠心力が働き、
組織としてまとまらなくなる事例は多くあります。

これらの背景から、多様な個性と組織の成果の間に立ち、両者をつなぐ
インクルーシブ・リーダーシップが求められるようになりました。

そして日本企業では特に、これまで均質的な組織を作ってきたからこそ、
より多様な個を活かすリーダーシップが企業の持続可能性に繋がるのです。

インクルーシブ・リーダーシップの効果

ここまで、インクルーシブ・リーダーシップの必要性についてご紹介してきました。
それでは、インクルーシブ・リーダーシップにはどのような効果があるのでしょうか?

Deloitte Tohmatsu Consultingの調査(2018)によると、
インクルーシブなリーダーがいる職場は、高いパフォーマンスを実現していると回答する傾向が17%高く、質の高い意思決定を下しているという回答の傾向は20%高く、協働的であるという回答の傾向は29%高い、という結果が挙げられています。

また、Deloitte Tohmatsu Consultingの別の調査(2013)では、
職場が包摂的であるという社員の認識が10%高まると、年間の出勤日数が1人につき
ほぼ1日増え、常習的欠勤のコストが減ることが分かっています。

これらのことから、インクルーシブ・リーダーシップによって職場が包摂的な環境になることで、社員同士が協働し職場全体のパフォーマンスが上がるとともに、欠勤者への対応など余分な時間的・労力的コストを削減できるようになることが分かります。

また、BCGの調査(2018)によると、
インクルーシブな職場では、そうでない同業他社と比較してイノベーションによる収益が19%向上していることが分かっています。

このことから、VUCAという社会変化の激しい時代において、社員の違いを受け入れ活用
するインクルーシブ・リーダーシップは適応しているといえます。

インクルーシブ・リーダーシップの発揮方法

ここからは、さらに具体的なインクルーシブ・リーダーシップの発揮方法について
お伝えしていきます。

Harvard Business Reviewでは、インクルーシブなリーダーとそうでない人の違い
として、6つの特性を挙げています。

①目に見えるコミットメント
多様性への真のコミットメントを表明し、現状に疑問を持ち、メンバーに説明責任を課し、多様性と包摂性を自分の優先課題としている。

②謙虚さ
自分の能力に関して謙虚であり、間違いを認め、メンバーが貢献できる場を作る。

③バイアスへの認識
人には盲点やシステムの欠陥があることを認識し、実力主義を徹底する。

④他者への好奇心
他者にオープンな思考と深い好奇心を持ち、人の言葉に耳を傾け、共感を持って周囲を理解しようとする。

⑤文化的知性
メンバーの文化に配慮し、必要に応じて適応している。

⑥効果的なチームワーク
メンバーを尊重し、多様な考え方や心理的安全性に配慮し、組織の団結力を高めている。

つまりインクルーシブ・リーダーシップを発揮する人は、協調的なアプローチをとり、透明性を持って働き、多様な文化を素早く受け入れ、組織に活用することができるのです。

そして、メンバーは自分が受け入れられていると感じ、自分の才能を最大限に発揮できる安全な職場だと捉え、パフォーマンスの向上に繋がるのです。

インクルーシブ・リーダーシップを発揮するための第一歩

ここまでインクルーシブ・リーダーシップの必要性や有用性、そして具体的な特性・行動例についてご紹介してきました。

とはいえ、
「職場で何から手をつければ良いのか分からない・・・」という方もいらっしゃるのではないでしょうか?

本コラムの最終章として、インクルーシブ・リーダーシップを発揮するための第一歩として、まず何から始めれば良いのか、ということについてお伝えします。

取り組むべきことは3つあります。

1つ目は、人材の多様性の問題点と可能性についての理解を深めることです。
冒頭でもお伝えしたように、近年はVUCA時代と呼ばれ、社会の変化が激しくなっています。

そのような背景からD&Iの推進が求められていますが、そもそもD&Iについての理解が乏しい状態だと、理想の職場のイメージも湧きません。
そのため、まずはD&Iについての理解を深める必要があります。

2つ目は、リーダー自身がどれほどバイアスに囚われているのかを知ることです。
これは前章でご紹介したインクルーシブなリーダーの特性で挙げた、「バイアスへの認識」に該当します。

バイアスは多様性の受け入れを阻害します。しかし誰しもバイアスは生じ、完全になくすことは難しいです。しかし、誰しもバイアスに囚われていることを受け入れ、自分自身が囚われているバイアスに気付くことで、多様な文化を受け入れることに繋がります。

最後に3つ目は、多様なメンバーと組織との間に立って意見を調整することです。
D&Iを実現するためには、多様な個を受け入れるだけでなく、それらを組織に活かさなければなりません。具体的には、

メンバーと組織との意見調整が必要になります。メンバーのボトムアップの意見を大切にしながら、組織としての方針も示す。この意見調整が、D&Iを実現する最難関のハードルと言っても過言ではありません。

具体的な方法としては、組織のコミュニケーションを活性化する「ファシリテーション」などのスキルが求められます。

インクルーシブ・リーダーシップ研修事例紹介

これらの第一歩に取り組む研修として、
弊社ではインクルーシブ・リーダーシップ研修を実施しています。

下記が研修の詳細です。


【インクルーシブ・リーダーシップ研修】

ねらい
・インクルーシブな職場の姿を理解し、インクルーシブ・リーダーシップ発揮のために
 必要な要素を理解する
・チームコミュニケーションのスキルとして「ファシリテーション」を習得する

研修内容
① オリエンテーション
トレーナーから、本研修のねらいを説明します。
また、トレーナーから積極的な自己開示をすることで、発言しやすい場を作ります。

② インクルーシブ・リーダーシップとは
D&Iが求められている背景について学び、人材が多様化することの問題点を話し合います。
また、ワークを通じて自分や職場がもっているステレオタイプやアンコンシャスバイアスに気付き、その対処法を習得します。

さらに、インクルーシブな職場に必要な条件を挙げ、インクルーシブ・リーダーに求められる要素や目指す姿を具体的にします。

③ ファシリテーションの基本
ファシリテーションの目的やファシリテーターの役割を具体的に明らかにします。
ファシリテーターに求められるコミュニケーションの基礎も習得します。

(1)ファシリテーションの目指すもの
(2)ファシリテーターの6つの役割
(3)ファシリテーターのコミュニケーション術

④ 「話し合い」を活性化するために
話し合いを活性化するために必須となる事前準備の重要性を理解します。
また、自分がファシリテーターでなかったときに、参加者として会議にどのような姿勢で臨む必要があるのか、その関わり方を学びます。

集団心理学の考え方を通じて会議を妨げる要因やその対策についても学び、
会議を活発にするための言い回しを習得します。

(1)話し合いは何のためにやるのか
(2)事前準備
(3)参加者としての心構え
(4)集団心理学
(5)ファシリテーターの効果的な言い回し

⑤ 意見の引き出し方&まとめ方
多様な意見を引き出し、まとめる手法を学び、演習を繰り返し行うことで、実践で使えるようにします。

(1)マッピング・コミュニケーション
(2)ブレインストーミング
(3)親和図法
(4)実践演習

⑥ まとめ
研修を振り返り、トレーナーからメッセージを送ることで、現場への実践に繋げます。


弊社では、個社ごとに完全オーダーメイドで研修をご提案しています。
パートナーとして協力いただいている外部トレーナーが400名以上おり、個社ごとに合った研修をプロデュースしていることが特徴です。

リーダーシップをテーマにした研修バリエーションも豊富です。
本記事を参考に、ぜひ自社の目的や課題に合った研修を実施してみてはいかがでしょうか。

【参考文献】

経済産業省、2021、『ダイバーシティ経営の推進』、 https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/index.html

コクヨ、2022、『ワーカーの「ダイバーシティ&インクルージョン」に関する意識』https://www.kokuyo-furniture.co.jp/solution/mana-biz/2022/06/post-662.php

Deloitte Tohmatsu Consulting. 2018. The diversity and inclusion revolution: Eight powerful truths
https://www2.deloitte.com/us/en/insights/deloitte-review/issue-22/diversity-and-inclusion-at-work-eight-powerful-truths.html

Deloitte Tohmatsu Consulting. 2013. A new recipe to improve business performance, Victorian Equal Opportunity & Human Rights Commission
https://www2.deloitte.com/content/dam/Deloitte/au/Documents/human-capital/deloitte-au-hc-diversity-inclusion-soup-0513.pdf

Harvard Business Review. 2019. Why Inclusive Leaders Are Good for Organizations, and How to Become One
https://hbr.org/2019/03/why-inclusive-leaders-are-good-for-organizations-and-how-to-become-one

Boston Consulting Group. 2017. The Mix That Matters, Innovation Through Diversity
https://www.bcg.com/publications/2017/people-organization-leadership-talent-innovation-through-diversity-mix-that-matters

World Economic Forum. 2022. Global Gender Gap Report 2022
https://www3.weforum.org/docs/WEF_GGGR_2022.pdf

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