2015年9月の国連総会で、国連加盟国197ヵ国が全会一致採択した
文書の正式名称は、「我々の世界を変革する(Transforming Our World):
持続可能な開発のための 2030 アジェンダ」でした。これがSDGsの原典です。
ここから急速にSDGsが広まり、投資の際の基準としてSDGsが重要視されるなど、
今やSDGsに取り組んでいない企業や事業は、マーケットから疎外されるリスクが
高くなるところまできています。
そんな中、人事領域ではISO30414により人的資本の情報開示が求められるなど、
「ヒト」への投資と企業の成長が、これまで以上に紐づけられていますが、
SDGsを自分ごととして取り組んでいる方はまだまだ少ないと感じています。
ですが、今やSDGsは従業員エンゲージメント向上や優秀な人材の
採用対策・内定辞退防止など、人事領域にも影響を及ぼし得るものとなっています。
そこで今回のコラムでは、人事の方にもSDGsを自分ごととして
取り組んでいただきたく、SDGsと採用・人材育成との関連についてご紹介します。
なぜSDGsに取り組むことが重要なのか
先ほどご紹介したように、国連加盟国197ヵ国すべての国が同意したことは、
「世界の変革」です。ここでいう変革は、「原型をとどめないレベルでの変容」と
いわれています。
その証拠に、コロナの影響で中止になりましたが、2021年に予定されていた
ダボス会議(世界経済フォーラム)のテーマは「グレート・リセット」でした。
その場しのぎではなく、まったく新しい経済社会システムを構築しなければ
ならないという考えが強く打ち出されて始めています。
そんな中、SDGsを実現するためにイノベーションを率いる役割を担うものとして
存在感を増しているのが、企業です。
ESG投資という言葉も流行しているように、投資資金もSDGs関連に向かって
流れており、将来のマーケットを見据える魅力的なツールとしてSDGsを捉え、
新技術や新たなビジネスモデルを生み出すことが企業に求められています。
企業は、これまでのように「今できること」の延長線上に将来を予測するのではなく、
「あるべき姿」から逆算して「今何をすべきか」を考えられるよう、
変わっていかなくてはいけません。
人事担当者がSDGsに取り組む2つのメリット
大きな変革を求められているからこそ、そこにはチャンスが生まれます。
人事担当者がSDGsに取り組むメリットは大きく以下の2つです。
①採用ブランディング
②従業員エンゲージメントの向上
【採用ブランディング】
2021年1月に株式会社電通によっておこなわれた、全国10~70代の男女
計1,400人を対象とした第4回「SDGsに関する生活者調査」によると、
SDGsの認知率では10代が一番高く、10代男性で75.9%、10代女性で72.2%でした。
職業別でも学生のSDGs認知率が一番高く、76.1%でした。
授業にSDGsを取り入れる学校も増えており、SDGsが目標とする
未来の当事者でもある10代・20代の学生は、今後どんどんSDGsへの関心が
高まることが予想されます。
実際、2021年8月3日に掲載された、朝日新聞の就活支援サイト
「朝デジ就活ナビ」によると、2022年3月卒業(修了)予定の
大学生・大学院生981人のうち、企業のSDGsに関する取り組みや社会貢献活動を
就職活動で意識する学生は、半数以上にのぼりました。
東京大学の学生が主体でSDGsに取り組む、TSCP学生委員会による
「東大生のSDGs意識調査2020」では、東大生の68%が就職先を選ぶ際に
SDGsを考慮するという結果も出ており、労働人口も減っていく中で優秀な学生を
採用するためには、人事や採用担当者が自社のSDGs取り組みをしっかりと理解し、
活用する必要があります。
【従業員エンゲージメントの向上】
SDGsは、求人にエントリーする動機になるだけではなく、内定者や新入社員に
あらためて会社への理解を深め、会社の将来について考えてもらい、
入社後のモチベーションやエンゲージメントの向上につなげてもらうことが
できるテーマです。
SDGsの取り組みを伝えることは、企業理念や会社事業の方向性、
ビジネスモデルについて理解してもらうことにつながります。
実際、内定者研修や新入社員研修にSDGsに関するテーマを取り入れることで、
内定辞退率を下げようとしたり、新入社員のモチベーションを上げ早期離職を
防止しようとする取り組みをする企業が増えてきています。
SDGsを推進するために人材に求められる2つのスキル
SDGsによって、人材に求められるスキルも変わってきています。
その中でも今後求められる代表的なスキルが以下の2つです。
①システムシンキング
②シナリオプランニング
【システムシンキング】
システムシンキングとは、あらゆる現象を1つのシステムとして捉え、
複雑な状況の中で視野を広げて、全体の構造を把握し、より根本的な問題解決を
導くとされている思考方法です。
たとえば、
・問題が多く、複雑に絡み合っていてどこから手をつけていいか分からない
・今まで成功してきた方法では、うまくいかなくなってきた
といったときに、組織を生きたシステムとして扱い、問題解決の
レバレッジ(全体を動かすてこ)を見つけるときに有効です。
ロジカルシンキングと比較すると具体的にイメージがつきやすいかと思います。
たとえば、ある会社でセールスパーソンの専門知識が不足しているという
問題があったとします。
ロジカルシンキングでは、商品知識という範囲に問題を限定して、
分野ごと・商品ごとにどのような知識が不足しているのか、
どれくらい不足しているのかを分析します。
その結果、足りないとわかった知識を習得できるような手だてを講じて
問題を解決しようとします。
一方、システムシンキングでは、単に専門知識の不足だけを問題視するのではなく、
専門知識にひもづく活用方法や、専門知識を提供する仕組みなど、
「セールスの専門知識」というテーマを取り巻く全体の状況を捉え、
関連する課題から問題を位置づけ、トータル的に専門知識が向上する手だてを
講じていきます。
【シナリオプランニング】
シナリオプランニングとは、未来に起こりえる複数の未来シナリオを描いたうえで、
自社がどう対処すればいいのかを導き出す手法です。
SDGsを推進して「変革」を目指すとき、従来のように、短期的視点を繰り返し、
戦略を精緻化・展開していくフォーキャストの考え方ではなく、長期的視点に立ち、
構築した未来シナリオと現在をつなぐバックキャストの考え方を
持たなくてはいけません。
シナリオプランニングでは、自社のバイアスを疑い、成長は続かないという前提で
業界周辺を広く捉えるマインドと、徹底的なアウトサイド・イン思考が必要です。
また、客観的な未来シナリオを構築するための手法を習得する必要もあります。
今回はそんなシナリオプランニングを学ぶことができる研修事例をご紹介します。
シナリオプランニング研修事例紹介
【研修事例】
テーマ:
シナリオプランニング
ねらい:
・他社に先駆けて、起こりうる未来環境に対応した戦略を
描くことができるようになる
・全社一丸となってSDGsのような課題に取り組むために、
「What」ではなく「Why」を共有し、未来の姿に納得感を持って描けるようになる。
内容:
①イントロダクション
変化が求められる時代にいることの危機意識を共有するとともに、
聞きなれない言葉である、シナリオプランニングの考え方や手法を学ぶ。
また、バックキャストで事業環境を考え、研修ゴールの具体的なイメージを掴む。
②シナリオプランニングの4つのステップⅠ:未来トレンド情報を整理する
4つのステップに従い、実際にシナリオプランニングをしていきます。
最初にグループディスカッションをおこない、自分たちの事業領域に関する
「未来トレンド」を、できるだけ抜けモレなく列挙し、世の中に散在するトレンド情報を一覧化します。
③シナリオプランニングの4つのステップⅡ:業界の未来を分ける重要な不確実性を
発見する
業界構造を「システム」として捉え、抽出した未来トレンド情報を因果関係で
つないでみます。
また、インパクト度×不確実性の軸で情報を整理し、業界の未来を左右する、
主要なビジネスドライバーを特定していきます。
④シナリオプランニングの4つのステップⅢ:不確実性を組み合わせて
複数の未来パターンを洞察する
主要な不確実性を洞察し、シナリオマトリクスを構築、未来を場合ごとに
分けていきます。
各場合が描き出す未来像をブレストし、自社業界の未来を構造的に
パターン認識することを目指します。
しかし、実際には考えたパターン通りにいくはずはありません。
シナリオプランニングで作成したシナリオを「ゴール」ではなく、
「スタート」として捉え、パターン通りにいかなくなるときに発見すべきサインと、
チェック方法をあらかじめ考えます。
⑤シナリオプランニングの4つのステップⅣ:アクションプランの導出
最も変化が求められるシナリオを前提として、
中長期的に強化・継続・中止すべきアクションを決め、今後1年間の
アクションプランを構築し、現場に送り出します。
弊社では、個社ごとに完全オーダーメイドで研修をご提案しております。
パートナーとして協力いただいている外部トレーナーが400名以上おり、
個社ごとに合った研修を実施しております。
本記事を参考に、ぜひご一緒に、SDGs推進のために必要な取り組みや自社に合った
シナリオプランニング研修を設計してみてはいかがでしょうか。