シニア世代がイキイキと活躍するために 〜シニア世代の働きかた支援〜

総務省統計局が公表しているデータでは、2020年から2021年で就業者数が9万人減り、
2年連続での減少となったそうです。

こうなった原因はいろいろ考えられると思いますが、それまでの就業者数が8年連続で増加していたことを考えると、この2年連続の減少に一番に影響しているのは、やはりコロナ禍ではないでしょうか。

コロナ禍による経済の停滞のため、安心して働ける環境が無くなってしまった人、働きかたを変えざるをえなくなった人は決して少なくないと思います。

しかし、その一方でこんなデータもあります。65歳以上の高齢就業者の数は、17年連続で増加し、2021年は906万人で過去最多の人数となりました。

小子高齢化社会という社会問題は、もうずいぶん昔から言われていますが、
これを個人レベルで実際に感じられるようなシチュエーションはそうはないと思います。

しかし、こうしてデータで見てみると、この少子高齢化という状態は、現実の問題として
私たちの目の前に突きつけられていることがわかります。

そして、この少子高齢化社会の中、企業にとって切実な問題となっているのが、
現場におけるシニア世代の活用です。
今回のコラムはシニア世代のキャリアと企業のあり方がテーマです。

シニア世代の3つの特徴

シニア世代の年齢の定義は、
国連やWHO(世界保険機構)で異なります(国連は60才、WHOは65才)。

企業の中でもその定義はまちまちですが、定年を迎えて継続雇用契約や再雇用契約を
おこなった人たちで、主に60才以上をシニア世代と定義しているようです。

昔のテレビドラマでは、会社を定年退職した父親が庭先で盆栽をいじる姿が、リタイアしたシニア世代の象徴的な場面として描かれていました。

しかし、今は時代も変わりました。仕事も趣味ももっとアクティブになり、
社会との結びつきも維持しながら働き続けるシニア世代の姿が主流になりました。

この、仕事を続ける「シニア世代」の特徴をあげるとしたら、主に以下の3つになります。

<仕事を続けるシニア世代の特徴>
1.これまで長い間、会社に貢献し今は仕事に一区切りがついている
2.近年の技術の進歩や、働きかたの多様化に対して自らを適合させなければならない
3.健康面やその他生活の現状維持にケアが必要となる


◆これまで長い間、会社に貢献し今は仕事に一区切りがついている世代
再雇用対象となるシニア世代は、会社で働き始めて30年以上の大ベテランであることが
多く、業務知識や技術だけでなく、会社の良かったころや悪かったころの会社の歴史まで
知っている人たちです。

しかし、これまでの経験からより専門的な役割で仕事を続けている人は少なく、
多くのシニア世代は一般社員と同じ仕事をしています。

すこし前までは管理職だった人も今は役職定年を迎えて一般社員に戻っています。

会社との雇用契約も、これまでとは異なる新たな条件で再雇用される人もいれば、同じ条件でも期限付きで雇用継続の契約をする人もいます。そしてこのタイミングで新たな部署に異動し、再スタートを切る人も少なくありません。

雇用契約の一区切りだけでなく、仕事内容自体もこれまでとは変わって一区切りがついた
世代といえます。

◆近年の技術の進歩や、働きかたの多様化に対して自らを適合させなければならない世代
長い間、ひたすら同じ部署で同じ仕事をしてきた人もいます。
そういった人たちは、ITリテラシーや仕事に対する価値観が、若い世代に比べて偏りが
大きい傾向があります。

そんな彼らにとっては、IT技術の進歩に応じて仕事の手順が変わることや、
これまではタブーとされていたものが認められるようになることは、とてもストレスに
感じることがあります。

しかし
「自分はこのやり方しか知らない」
「その考え方は受け入れられない」
と突っぱねていては、あっという間に自分の居場所がなくなります。

これからも働き続けるのであれば、自身のスキルや考えかたの見直しが必要な世代といえます。

◆健康や生活面の現状維持にケアが必要となる世代
やはり年齢による衰えや病気のリスクは年々高まり、健康面のケアがより大切になっています。本人はまだまだ若い、まだまだ大丈夫と思っていても、ある日、重大な病気が見つかり、即入院という事態になっても決して不思議ではありません。

また特に病気などになっていなくても、過労による集中力の低下や、モチベーションの減退などに陥ったとき、若いころに比べれば、その復調に時間が掛かるようになっています。

「シニア世代の活用」という難題と向き合う企業

少子高齢化社会が進む中、企業は慢性的な人手不足に陥っています。

特に若い年齢層の人材不足は単純な労働力不足だけでなく、将来のリーダー候補を育てられないという会社の生命線にも関わる問題にもつながります。

そんな中、これとは別で向き合うべき難題を企業は抱えています。
それが今回のコラムテーマである「シニア世代の活用」です。

単純に考えれば、若い世代が足りないことで起きる労働力不足なら、シニア世代を活用することで解消できそうな気もします。そうなれば一石二鳥なのですが、この問題はそう簡単なものではありません。このシニア世代の活用が難しい理由は主に3つあります。


難しい理由1:シニア世代に担当してもらうポジションがない
そもそも10年後、20年後の会社を支えていくという役割をシニア世代が担うことは出来ません。その前提を考えたとき、最初にしなければならないことは、これまでシニア世代が
担当していた仕事を次の世代が引き継ぐということです。

しかし、その引き継ぎをおこなえば、シニア世代のやることがなくなってしまい、
今度はシニア世代のための新しい仕事、新しいポジションが必要になります。

ここでシニア世代のために新たな仕事、新たなポジションを作れたとしても、会社での仕事というものは必ず複数の人が関わります。新たな仕事の流れは、そこに関係するシニア世代以外の人たちの新たな負荷となります。

仮に一人だけでできるような仕事があったとしても、それはシニア世代の孤立という
また別の問題につながります。

シニア世代が今の会社で働き続けるためには、どうしても全体の人員体制から調整が必要となってしまいます。

難しい理由2: シニア世代自身のモチベーションをあげなければならない
会社にもよりますが、たいていのシニア世代は役職定年を迎えたタイミングや、再雇用契約をしたタイミングで、給与金額がガクッと下がります。

またそれらと同時に、仕事内容や部署の変化、人生の節目ということで
これからはプライベートも考えたい欲求が生じるなど、さまざまな理由で仕事への
モチベーションが低下します。

別に仕事へのモチベーションなどなくても、ただ言われた作業をやってくれれば良いという会社であれば、それでも構いませんが、これは「シニア世代の活用」というよりも、
「シニア世代の一時的な保護」です。

ただ言われたままやる単純作業がなくなった時、シニア世代も会社もお互いに困ることに
なります。

また他の社員たちからどう見られるかも考えれば、シニア世代でもやはり仕事には高い
モチベーションをもって取り組んでもらいたいものです。

難しい理由3:シニア世代の体力や集中力の低下を周りも理解しなければならない
年齢からくる衰えなどは、本人たちにもどうしようもないものがあります。
ここで無理をして体調を壊したら働く意味がないので、シニア世代は自分自身の
コンディションと相談しながら働きかたを調整する必要があります。

そしてここで大事なのが、そのシニア世代の状況をシニア世代以外の人も理解することです。

この理解が不足していると、若い世代から見れば、自分たちばかりが忙しくシニア世代は
気楽という印象を持つことになったり、時にはシニア世代が出来ない分を、自分たちが
カバーしなければならないと考え、シニア世代への直接的な不満になる場合があります。

シニア世代を受け持つ管理職は、シニア世代だけでなく、一緒に働く若手の気持ちにも配慮する必要があります。

これからシニア世代と会社がすべきこと

本当の意味での「シニア世代の活用」とは、
シニア世代がイキイキと活躍しており、周りの人たちもそこから何らかの恩恵を受けている状態です。

これはシニア世代が安心し、やりがいをもって働ける職場環境の形成とも言い換えられます。

この実現のために、シニア世代と会社はこれまでの認識を改め、新しい考えかたを持たなくてはなりません。具体的に認識すべきは、以下の2つです。


1.明確な目的や目標が見出せないままの雇用延長、再雇用契約は、本人や会社の両方に
  とって良くない結果になる。
2.「シニア世代の活用」とは、日本全体で今まさに始まった段階であり、どの企業も
  試行錯誤で取り組むものである。

シニア世代の気持ちとしては、一区切りつけて他のことをしたいと思っても、生活のためには働き続けなければならないというのが本音で、仕方なく雇用延長をしているのかもしれません。

しかし、仕事は楽なものばかりではなく、また常にうまくいくものでもありません。

とりあえず続けた仕事において、大変な状況や失敗に直面した時、
「本当はこんなことしたくない」という想いがよぎってしまったら、
もうその仕事からはストレスしか感じないようになります。

溜まったストレスは一時的に発散できるかもしれません。しかし、ストレスを受けては
それを発散するという日々の繰り返しで貴重な人生の残り時間を費やすことは、
時間の浪費をこえて人生の浪費と言っても言い過ぎではありません。

また、企業側からしても、ただただ我慢しながら仕事をする人からは、文句は出てきても
建設的な意見やアイデアが出てくることはないと思っています。

シニア世代に対して最初はこれまでの貢献なども評価し、好意的な再雇用という形をとったとしても、日に日にその判断にも疑問を持つようになり、最後は悪い印象ばかりが先行するようになってしまいます。

こうならないためにも、雇用継続、再雇用をする際には、その目的や働いていく中での目標をなによりも早く見つけることが大切です。

これを具体的に実現するための手助けとなるのが、シニア世代向けのキャリア研修や、研修後の定期的なキャリアコンサルです。

研修後のキャリアコンサルは、専門のキャリアコンサルをつけることが出来なければ、
会社の上司でも対応可能です。シニア世代の働く目的や目標を出来るだけはやく見つけて、仕事のモチベーションに反映させていくことが大切です。

そしてもう一つ認識すべきことは、
シニア世代が安心して会社に所属できる環境、望めばまだまだ活躍できる環境、
人生とのバランスを保ちながら働き続けられる環境、これらが実現した環境は
まだどこにもなく、誰も経験したことがない未体験ゾーンであるという認識です。

コロナ禍によるここ数年の政府の対応で、多くのコメンテーターが述べていました。

誰も正解を知らないのだから、試行錯誤をしていくしかない


少子高齢化という社会の問題もこれと同じで、シニア世代の活用はこの一部です。

今向き合っている問題は、日本全体で各企業が現在進行形で初めて経験しているものばかりです。

そしてこの手探りで解決する新たな問題は、シニア世代もしくは会社のどちらか一方だけが頑張ってもうまくはいきません。

そもそも、お互いのためにどう役に立てるかを考えようとしたとき、意見交換もしない
まま、どちらか一方が思いついたアイデアを採用しても、たいていは的外れか押し付けに
しかなりません。

どうすれば会社の役に立てるのか?
どうすればシニア世代が働きやすくなるのか?

お互いにお互いのことを考えれば、きっとこの問題の答えも見えてきます。

またそれは、特別な研修や会議だけでなく、日々の仕事や会話の中にもそのヒントは
あるはずです。

キャリア研修事例紹介

ここからは、弊社で実際に実施したキャリア研修の事例をご紹介します。
演習も含めた半日の研修事例です。


【研修事例】

テーマ:
シニア世代のキャリアデザイン

ねらい:
・シニア世代が今後のキャリア形成について、主体的に考える意思と姿勢を確立する。
・シニア世代の今後5年間のキャリアプランを作成し、一歩を踏み出す後押しをする。

内容:
① オリエンテーション
トレーナーから本研修のねらいの説明、各グループにわかれて自己紹介をおこないます。

② 定年・再雇用への対話セッション
定年を迎えた気持ち、再雇用期間に入る今の心情などを、気持ちのままに語り合います。
モヤモヤした気持ちを一度リセットし、これからの課題について前向きに考えられる状態をつくります。

③ 定年後を考える視点
会社に残る選択をしたのは何故か?
これからの5年間は自分にとってどんな意味があるのか?
自分の今の状況を客観的に見て、今がどんな状況にあるのかを考えます。

④ 「もう一人の自分」を見出し、育てる
「仕事以外で関心のあることに取り組むもう一人の自分」を見出します。
もう一人の自分が育ち、主体的に活動できるようになれば、その気持ちが会社員の自分にも影響し、同じようにイキイキすることができます。

⑤5年間のキャリアプラン作成
再雇用期間のキャリアプランを作成し、グループ内で発表します。今後の具体的な
行動プランを口にすることで、これから前向きに仕事と向き合えるようになります。


弊社では、個社ごとに完全オーダーメイドで研修をご提案しております。
パートナーとして協力いただいている外部トレーナーが400名以上おり、
個社ごとに合った研修をプロデュースしております。

シニア世代のキャリアをテーマにした研修バリエーションも豊富です。
本記事を参考に、是非自社の目的や課題に合った研修を実施してみてはいかがでしょうか。

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