チームビルディングに大切な、部下との信頼関係を築くためのマインドセット

強い組織をつくるには、組織内の信頼関係が欠かせません。
しかし、上司として組織をまとめる立場の方には、
「部下とのコミュニケーションがうまくいかない」
「何度言ってもこちらの指示を理解してくれない」
「個々人がバラバラに動いてしまって業績が思ったように上がらない」
といったお悩みを持つ方が多いのではないでしょうか。

信頼関係のない組織は、チームワークに欠けてしまい、
成果を出すことが難しくなります。

このコラムでは、そもそもチームとは何なのか?
チームワークとは何を意味するのか?
を考え、生産性を上げていくチームビルディングにとって必要な
信頼関係構築について紹介いたします。

チームとは何か

チームとは組織の形態のひとつです。

アメリカの経営学者バーナードの言葉を借りると、組織とは
「意識的で、計画的で、同じ目的をもつ2人以上の協働活動」を意味します。

そしてその中でもチームは、
「協調を通じてプラスの相乗効果(シナジー)を生むもの」とされており、
言い換えると、チームは共通の目標を達成するために存在しているといえます。

そんなチームの特徴は以下の4つです。

①共通の目標がある
②メンバーの行動を規制するルールがある
③われわれのチームであるという感情がある
④ある程度安定した人間関係がある

つまり、個々のメンバーが組織の中で影響しあいながら、
お互いに足りない部分を補う中でチーム目標の達成を目指す共同体が、
チームワークの本質といえます。

チームのパフォーマンスはどのようにして決まるのか

では、チーム力を高めるためにはどうしたらいいのでしょうか。
能力の高いビジネスパーソンを集めればいいのでしょうか。
それとも、モチベーションの高いビジネスパーソンを揃えればいいのでしょうか。

これらの考え方は必ずしも正解とはいえない場合があります。
チームメンバーの総和がチームの能力とはなりませんし、
個人のやる気を高めればチームのやる気が高まるわけでもありません。

チームのパフォーマンスは、
「チームの潜在能力」―「集団過程による損失」という計算式によって示されます。

集団過程による損失とは、チームが抱えるいくつかの問題のことです。
代表的なものに、「社会的手抜き(ランジェルマン効果)」があります。

この社会的手抜きがおこる理由を簡単に5つにまとめました。

・何かを依頼されたときに、個人とチームでは、
各個人が受けるインパクトの大きさに違いが生じる。
つまり、チームになるとどこかで「他人事」になりやすい。
・チームのメンバーは、自分の努力がチームのパフォーマンスに
どれほど貢献するかと考え、チームの組織が大きくなるとこの意識が
あいまいになる傾向がある。
・チーム作業の場合、個人の努力がチームのパフォーマンスに貢献しないだろう
という思いが働き、モチベーションが低下する。
・チーム作業の場合は、他のメンバーがどれくらい頑張っているのかに、
自分のレベルを合わせようとして、自分の努力を弱める可能性がある。
・チーム作業の場合、個人で作業する場合よりも集中力を維持することが
難しくなる傾向がある。

他にも、メンバー間の価値観の違いや目標の違いなどでも損失が生まれます。

チームのパフォーマンスを高めるためには

多様な人とチームを形成している以上、これらの損失を無くすことは
現実的ではありません。
チームメンバーの人数を10名未満にしたり、メンバーの相性を考えたり、
チームメンバーの役割を明確に定義することで、損失が生まれにくい環境を
整えることは可能ですが、それだけでは不十分です。

チームには、次のような特有の成長プロセスがあるといわれています。
①形成期:メンバーが集まり、チームが形成される。
②混乱期:メンバー間の葛藤が表面化し、チームに混乱や動揺が生じる。
③規範期:チームの規範が成立し、チームとしてのまとまりやモラルが向上する。
④生産期:集団目標の達成に向けてチームが集中力を発揮し、パフォーマンスを高める。

チームを組んでいる以上、必ず発生する何らかの問題が生じた時こそ、
管理職やリーダーが「チームが成長するチャンスだ!」と捉えて、
しっかりとその課題解決に向き合うのかによってチーム力に大きな差が生まれます。

「雨降って地固まる」ということわざのように、
特に嵐のような②混乱期から③規範期に成長する段階をどのように乗り越えるかが、
④生産期のパフォーマンスに大きな影響を与えます。

チームの生産性を向上させる成功循環モデル

チームが形成される中で、具体的にチームの生産性を向上させる方法として、
マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム教授が提唱した「成功循環モデル」があります。

成功循環モデルでは、組織を4つの質で捉えます。周囲との関わり方や
コミュニケーションといった「関係の質」が高くなると、
自然と考え方も前向きになり、目的意識が高まって「思考の質」が上がります。

それが人々の積極性や主体性といった「行動の質」を高め、
成果が生まれて「結果の質」につながります。
すると、ますます関係の質が高くなる、といった循環を指しています。
当然、「関係の質」が低くなると逆の悪循環につながります。

自分の組織をこのようなフレームで捉えてみると、
現状やありたい姿を整理して理解することに役立ちます。

最も重要なのが、循環モデル最初である「関係の質」ですが、
これには様々な要素があり、また、「関係の質」を深めていくための段階があります。

最初の段階が「あいさつ」や「声かけ」です。
ついで「会話量」、「感謝」、「尊重」、「背景理解」などの段階を経て、
最も進んだ段階とされるのが「協働」や「信頼」です。

この「関係の質」が成功循環モデルの良い循環につながっていきます。
つまり、強いチームを形成し、チームの生産性を向上させることに
重要なことの一つが、信頼関係の構築といえます。

信頼に基づくチームビルディング

組織の管理職やリーダーが信頼を獲得するためには、どうしたらいいのでしょうか。
社会心理学者のエドウィン・ホランダーが提唱した「信頼蓄積理論」では、
信頼を獲得するためには、「同調性」と「有能性」が必要だといわれています。

簡単に紹介すると、
・相手を大切にする
・問題の原因を自分に求め、自分が変わることで問題を解決する
・誠実であり、小さな約束を守る
ことなどが、信頼を蓄積させていきます。

アドラー心理学でいう、「勇気のある人」にもつながります。
勇気のある人とは、
・自分には能力や価値があると信じている
・自分の欠点や弱さを受け入れている
・他者を仲間だと思い、いつもくつろいでいる
・多様性を認め、裁かない
・困難を協力的に克服
する人です。

このような信頼関係を築くことができるマインドセットによって、
「関係の質」が向上し、生産性を上げていくチームビルディングにつながるのでは
ないでしょうか。

部下との信頼関係を築くことができる研修事例紹介

最後に、実践的なカリキュラムで、部下との信頼関係構築手法を
習得することができる研修事例を紹介いたします。

***チームビルディング研修***


1)【信頼に基づく関係性構築を知る】

部下との信頼関係を築くための考え方として、
最も大切な「信頼」と「人間力」を、孔子、アリストテレスの言葉、
およびトレーナーの経験などを交えながら解説します。

ドラマ仕立てのDVDを視聴し、信頼を貯金するための3原則
「相手を大切にする」「自分を指さす」「誠実である」について理解します。

2)【信頼を貯金するためのコミュニケーションスキルを身につける】
“信頼を貯金するための3原則”を実現するための
コミュニケーションスキルをペアでロールプレイングによって体験します。
失敗や成功を繰り返しスキルアップしていきます。

3)【アドラー心理学に学ぶ部下育成の心理学を学ぶ】
アドラー心理学を活用して、チームと自分を勇気づけるリーダー像について学びます。
フロイトの原因論と目的論の思考フレームを学び、
動機づけや教育の観点からの活用を考えます。

また、変革とイノベーションを生む組織に不可欠な「心理的安全性」について、
アドラー心理学の勇気の観点から学びます。
さらに、対人関係の基本となる「課題の分離」および、
勇気づけをしながらタスクを前に進める技法「協力と目標の一致」を
身につけるべく練習を繰り返します。

4)【学びからアクションプランを策定する】
「信頼に基づく関係性構築」と「アドラーに学ぶ部下育成の心理学」
双方で立案したアクションプランを1つにまとめプランを立て、
発表とコミットメントをおこないます。

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