女性活躍推進法とは ~2022年4月の改正内容とこれまでの背景がわかります~

2022年4月に、改正された女性活躍推進法が施行されたことにより、この法律の対象となる企業の範囲が拡大されました。

女性活躍推進法は、自分の意志で働きたい女性が、“個性と能力を十分に発揮できる社会”の実現を目指して制定された法律です。

この法律では、事業主に対して、

女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画の策定・届出
女性活躍推進に関する情報公表

を義務付けています。

これまでは、常時雇用する労働者が301名以上の事業主が対象となっていましたが、
今回の改正により、常時雇用する労働者が101名以上300名以下の事業主も、義務の対象となりました。

そこで今回は、対象企業が取り組むべき内容と、女性活躍推進法が定められた背景について、あらためてご紹介します。

2022年4月の改正により対象となる事業主とは

前述のとおり、今回の法改正では、「常時雇用する労働者」
101名以上300名以下の事業主も、女性活躍推進法の対象となりました。

この、「常時雇用する労働者」には、正社員だけでなく、契約社員やパート、アルバイト
なども対象となるケースがあります。

厚生労働省によるウェブサイト「女性の活躍推進企業データベース」によると、
「常時雇用する労働者」には、

①期間の定めなく雇用されている者
②一定の期間を定めて雇用されている者であって、過去1年以上の期間について引き続き雇用されている者又は雇入れの時から1年以上引き続き雇用されていると見込まれる者

が含まれます。

この点に注意しないと、自社は対象外、と勘違いしてしまうことがあります。

対象となる事業主がおこなうべき取り組みとは

こちらも前述のとおり、対象となる事業主は、

女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画の策定・届出
女性活躍推進に関する情報公表

をおこなわなくてはいけません。

それぞれについて詳しくご紹介します。

【一般事業主行動計画の策定・届出】
女性活躍推進法の対象となる事業主がまず取り組まなくてはいけないのが、
行動計画の策定と届け出です。

これは、以下の4つのステップでおこないます。

①自社の女性の活躍に関する状況の把握、課題分析
このステップでは、基礎項目(必ず把握すべき項目)として以下の4つが定められています。これら4つの項目の状況をもとに、自社の課題と改善策を分析します。

 (1)採用した労働者に占める⼥性労働者の割合
    直近の事業年度の⼥性の採用者数÷直近の事業年度の採用者数×100(%)
    ※採用者数は中途採用含む
 (2)男⼥の平均継続勤務年数の差異
 (3)労働者の各⽉ごとの平均残業時間数等の労働時間の状況
    各⽉の対象労働者の(法定時間外労働+法定休日労働)の総時間数の合計
    ÷対象労働者数
 (4)管理職に占める⼥性労働者の割合

このほか、状況把握することが効果的であるとされる選択項目もありますが、
義務ではありません。

②行動計画の策定、社内周知、公表
課題にもとづき、1つ以上の“数値目標”を設定し、みつかった課題を改善するための施策を、「行動計画」としてまとめます。
これは、A4用紙1枚程度で問題ありません。

厚生労働省のパンフレット「女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定しましょう!」に詳しくありますが、

・計画期間:おおむね2年~5年間
・目標:数値目標を設定します。たとえば、女性管理職の数を1人から3人にする、など
・取組内容:設定した数値目標を達成するために、いつまでにどのようなことをするのか

を、「行動計画」として記載します。
これは、複数記載してもかまいません。

そして、この「行動計画」を掲示することで社内周知をおこなうとともに、自社のウェブサイトや厚生労働省の専門サイト「女性の活躍推進企業データベース」を通じて、外部にも公表します。

③行動計画を策定した旨の届出
策定した行動計画を、管轄の都道府県労働局に提出します。
提出方法には、電子申請、郵送、持参の3つがあります。

④取組の実施、効果の測定
定期的に、行動計画の実施状況や目標達成状況を点検、評価し、PDCAを回します。

【女性活躍推進に関する情報公表】
常時雇用する労働者数が101人以上の事業主には、「自社の女性活躍に関する情報の公表」も義務化されます。
公表する項目は、労働者数が300人以下であれば、以下の全項目からひとつ以上とされています。
労働者数が301人以上の場合には、それぞれのカテゴリーから1項目以上、全部で2項目以上とされています。

公表方法は、前述の「行動計画」と同様です。
また、年に1回の情報更新も求められています。

~働きがいに関する実績~
・採用した労働者に占める女性労働者の割合
・男女別の採用における競争倍率
・労働者に占める女性労働者の割合
・係長級にある者に占める女性労働者の割合
・管理職に占める女性労働者の割合
・役員に占める女性の割合
・男女別の職種又は雇用形態の転換の実績
・男女別の再雇用又は中途採用の実績

~働きやすさに関する実績~
・男女の平均継続勤務年数の差異
・10事業年度前及びその前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用割合
・男女別の育児休業取得率
・労働者の1月当たりの平均残業時間
・雇用管理区分ごとの労働者の1月当たりの平均残業時間
・有給休暇取得率
・雇用管理区分ごとの有給休暇取得率

えるぼし認定とは

女性活躍推進法にもとづき、女性の活躍推進に関する状況や取り組みなどが優良な企業を認定する制度として、「えるぼし認定」があります。
認定レベルは1つ星~3つ星の3段階で、星の数が増えるほど、女性活躍が進んでいることを表しています。

認定されるには、「採用」「継続就業」「労働時間等の働き方」「管理職比率」「多様なキャリアコース」の5項目において、一定基準を満たす必要があります。

さらに、えるぼし認定を受けた事業所のうち、特に女性活躍において優れた結果を出している企業には「プラチナえるぼし認定」がされます。

えるぼし認定されると、女性活躍のアピールにつながり、採用活動で選ばれやすくなったり、官公庁入札で加点される場合があるなどのメリットがあります。

女性活躍推進法が定められた背景とは

女性活躍推進法は、職業生活において女性が活躍しやすい環境を作ることを目的に、
10年間の時限立法として2016年4月に施行された法律です。

女性活躍推進法では、
・女性に対する採用や昇進の機会を積極的に提供すること
・職業生活と家庭生活を両立させるために必要な環境を整備すること
・職業生活と家庭生活の両立は本人の意思が尊重されること
が基本原則となっています。

なぜ、このような女性活躍推進法が制定されたのでしょうか。
ここでは、その背景をご紹介します。

日本ではこれまで、1986年の男女雇用機会均等法にはじまり、1991年の育児休業法、2003年の次世代育成支援対策推進法などと、女性の活躍を後押しする法律が整備されてきました。

男女雇用機会均等法のころは、女性の社会参画が進んだことを背景に、女性差別撤廃など、人権的な問題が主にクローズアップされていました。

それが今では、少子高齢化や日本における女性の地位向上の遅れなどの課題を背景に、更なる女性活躍が求められるようになっています。

特に2003年には、当時の小泉内閣のもと、男女共同参画推進本部で「2020年までにあらゆる分野の指導的地位に女性が占める割合が、少なくとも30%程度になることを期待する」という本部決定がおこなわれ、具体的な数値目標が示されました。

当時の民間企業の女性管理職比率は、課長相当で5.5%、部長相当で3.2%だったので、非常にチャレンジングな目標設定だったといえます。

ちなみに30%の根拠は、1990年に採択された国連の「ナイロビ将来戦略2000年勧告」の中で、女性が影響力をあたえるクリティカルマスが30%であるとされたからです。

安倍内閣のときにもこの目標は支持され、「すべての女性が輝く社会づくり」が推進されてきました。
しかし結果は、2020年の段階で民間企業の女性管理職比率が、課長相当で11.4%、部長相当で6.9%にすぎず、目標にははるか届きませんでした。
結局、目標達成は“2030年までの可能な限り早い時期”に、先送りされています。

このように、女性が働く環境づくりはまだまだ十分ではありません。
男女平等の考え方は当たり前になっていますが、事実として女性の非正規雇用率は高く、生涯年収は男性より低く、離職率は男性より高いなど、問題は多く残っています。

このような状況のなか、今後の労働人口減少も踏まえ、女性の労働参加は国の将来のためにも欠かせないとして、男女雇用機会均等法が施行されてから30年となる節目の年に、女性活躍推進法が制定されたのです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
今回のコラムでは、2022年4月の施行にともない、ふたたび注目を集めている、
女性活躍推進法についてご紹介しました。

弊社は、2008年の創業以来ずっと、人材育成研修を通じて、女性活躍推進を応援してきました。豊富な経験をもとに、多様な切り口で、皆さまの女性活躍推進のお手伝いすることができます。


弊社では、個社ごとに完全オーダーメイドで研修をご提案しております。
パートナーとして協力いただいている外部トレーナーが400名以上おり、
個社ごとに合った研修をプロデュースしております。
女性活躍推進研修のバリエーションも豊富です。
是非自社の目的や課題に合った研修を実施してみてはいかがでしょうか。

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