高度経済成長期を経て、多種多様な商品・サービスが生まれるようになり、
現代社会はモノや情報があふれるようになりました。
特に最近はVUCAの時代といわれ、ビジネスモデルを見直そうとする企業も増えています。
そんな中、ビジネスパーソンには、「新規事業」や「変革」を起こすことが求められ、
企業に変化を起こすことができる人材を育成しようと、様々な取り組みがなされています。
その結果、多様な働き方・意見が認められ、1on1なども普及し、発言しやすい環境づくりが進んでおり、
社員からアイディアがたくさん出てくるようになった企業様も多いのではないでしょうか。
ですが、そのアイディアは“お金を稼ぐ”ことができますか。
ビジネスパーソンとして企業で働くにしても、別会社で事業を始めるにしても、
ビジネスである以上、稼げなくては持続することはできません。
・ビジネスとして“お金が回る”ことの感覚がない
・市場を俯瞰して自社の立ち位置などを理解する視点を持てず、
目の前にある業務単位での改善案しか出てこない
・アイディアにお金の話が加わると、途端に自分の言葉で説明ができなくなるなど、
お金や数字を語れない社員に悩む人事担当者や現場管理職は、
多くいらっしゃるのではないでしょうか。
経営にまつわる会計は英語・ITと並ぶ、ビジネス三種の神器といわれています。
特に最近では、新入社員~3年目社員という若い社員に、
会計や財務の基礎知識を習得させようとする企業様が増えてきました。
若手社員といえども、ロジカルシンキングやロジカルライティングなどの、
読み書きだけでは不十分です。
ビジネスパーソンには、読み書きそろばん、のすべてが必要です。
そこで今回のコラムでは、会計や財務の基本である、ビジネスパーソンなら
誰でも知っておくべき決算書の読み解き方を、簡単にご紹介します。
なぜ決算書を読める必要があるのか
「決算書は難しそうだし、専門用語と数字ばかり並んでいてよくわからない。
そもそも投資家や経営者だけが読めればいいのでは。」
と思っているビジネスパーソンは多くいらっしゃいます。
ですが、決算書を読み解いてみると、
競合他社やクライアント企業の歴史、イメージとは全く違う売り上げ構成が
見えてくることがあります。
また、どんなビジネスモデルが利益を多く生み出しているのか、
それを自社に応用するためのアイディアを具体的に考えられるようになるなど、
仕事に活かせる場面が多く出てきます。
決算書のない会社はありません。
決算書を読み解けるようになると、「なんとなく」ではなく
「具体的に」会社の経営状態を知ることができます。
そうすると、ビジネスパーソンに欠かせない3つの視点を獲得することができます。
①この会社は潰れないか
取引先が倒産した場合、企業は大きなダメージを受けますし、
自分が倒産した企業の営業担当であれば大きな減点となってしまいます。
一方、自分が働いている会社が倒産した場合、どんなに自分がよいポジションにいても
意味がなくなります。
②この会社に将来性はあるか
将来性がある企業との取引は、最初は小さな利益しか生まなかったとしても、
後々大きな取引に発展する可能性がありますし、自社や自分のアイディアに
応用することもできます。
また、自分が働いている会社に将来性があれば、給料が上がる期待も高まります。
③最適な提案は何か
自社や競合他社など過去の行動を検証することで、この先どうすれば競争に勝って
安定成長ができるか、という視点で自社事業や自分のアイディアを考えられるようになります。
社員一人ひとりが経営者のような視点を持つことで、自分で考え、
判断・行動し、上層部に積極的に具体的なビジネスを提案できるようになります。
決算書ってなに?
そもそも決算書とは、何なのでしょうか。
決算書は、ひと言でまとめてしまえば、「会社の健康診断書」といえるようなものです。
その決算書にはいろいろな種類がありますが、専門家ではありませんので、
すべてを知る必要はありません。
ですが、主な内容を読めるようになると、その企業の戦略や活動の状況など、
企業の全体像を把握することができるようになります。
知っておきたい主な内容は、「財務三表」と呼ばれる、
「貸借対照表」
「損益計算書」
「キャッシュフロー計算書」
です。
①貸借対照表
貸借対照表は、バランスシートとも呼ばれ、会社の財産のスナップショットと
いわれています。
つまり、「ある時点」で、会社がどんなプラスの財産(資産)と
マイナスの財産(負債)を持っているかを一覧表にして表したものです。
ここでは詳しく説明しませんが、「お金がどうやって集められたのか」と
「お金がどのように使われているのか」が書かれています。
この貸借対照表を見れば、
「会社の資金繰りがうまくいっているかどうか」や
「会社が支払い能力を十分に有しているか」を
分析することができます。
②損益計算書
損益計算書は、「一定期間の会社の業績を記録したもの」です。
損益とあるとおり、損失と利益が書かれています。
この損益計算書には、利益を主に5つに分けて記載してあり、
その会社がどうやって利益を上げているのか、がわかるようになっています。
5つの利益とは、以下の通りです。
「売上総利益」・・・売り上げから原価を引いたもので粗利とも呼ばれます
「営業利益」・・・売上総利益から人件費や家賃など、販売・管理にかかった経費を
引いたもので、本業でのもうけ、がわかります。
「経常利益」・・・営業利益に、利息や株式配当などの資金運用による損益を
加えたもので、会社の日常的なもうけ、がわかります。
「税引前当期純利益」・・・経常利益に不動産売却などの臨時的な利益や損失を
加えたもので、会社全体のもうけ、がわかります。
「当期利益」・・・支払った税金を差し引いた最終利益で、いわゆる「会社の手取り」です。
この損益計算書を読めるようになると、どこまで売り上げが落ちたら赤字となるのか、
といった損益分岐点も見極められるようになります。
③キャッシュフロー計算書
キャッシュフロー計算書は、「一定期間のお金の動き」を表したもので、
会社の家計簿のようなものです。
営業活動など企業の活動を以下の3つに分けてお金の動きを記載しています。
「営業キャッシュフロー」・・・販売や仕入れ、経費など、
日常の活動から生じるお金の動きです。
ここがプラスなら本業で稼げていることを意味します。
「投資キャッシュフロー」・・・設備投資や株式購入、資産売却などの、
商売上でのお金の動きです。投資をした場合はマイナスに、
資産を売却するなどした場合はプラスになります。
「財務キャッシュフロー」・・・銀行からの借り入れなどをした時いくら
資金が増えたか、どれだけ返済して、いくら減ったかなどのお金の動きです。
返済よりも借り入れた金額が多い場合はプラスになります。
事業を経営するうえで、お金の動きを追うことが最も重要であるといわれています。
キャッシュフロー計算書を読めるようになると、どのような過程で
お金が生み出されているかがわかります。
財務三表の関係性
財務三表はそれぞれつながっています。
例えば、損益計算書にある当期純利益は貸借対照表の利益剰余金に
積み立てられていきますので、毎年利益を出している会社であれば、
毎年利益剰余金の額が増えていくことになります。
また、キャッシュフロー計算書の現金残高は貸借対照表の現金につながっています。
他にも、損益計算書の税引前当期純利益は、キャッシュフロー計算書の
営業活動によるキャッシュフローの中につながっています。
財務三表それぞれと、そのつながりを知ることで
・利益効率
・安全性(潰れないか)
・収益性(稼ぐ力があるか)
・生産性
などがわかるようになるのです。
アカウンティング研修事例紹介
会計の知識を身に付けることのメリットには、
・取引先企業が安定しているのか、収益を上げられるのかなど客観的に判断できる
・取引先企業や同業他社などの決算書を読み解くことで、業界全体を俯瞰できる
・数字に基づいた説明やプレゼンができ、上司や顧客から信頼してもらえる
・収益構造や財務構造を読み解くことで、ビジネスの「勝ちパターン」を見極められる
などが挙げられ、どれも日常の仕事で役立てるものばかりです。
しかし、特に若手のビジネスパーソンで会計の知識を持っている方は少なく、
専門用語などに苦手意識を持っている方が多いのが現状です。
そこで今回は、「ビジネスとして“お金が回る”ことの感覚を養う」ために、
専門用語の勉強をせず、日々の活動とビジネスのつながりを、
具体例を多く取り入れながら楽しく、イメージしやすいように
学べる研修をご紹介します。
テーマ:
アカウンティング研修(2日間)
ねらい:
・モノの流れとお金の流れを理解し、ビジネスとして“お金が回る”ことの感覚を養う
・日々の活動と自社のビジネス活動のつながりを、有機的に理解する
・自社のビジネスモデルの中での、日々の自分の活動の位置づけを把握する
学びのポイント:
・財務三表の読み解き方を習得する
・財務分析に用いる指標をみて、他社と比較することにより自社の状況を理解する
・実際の企業活動と財務諸表のつながりを理解し、経営的な視点を身につける
内容:
①財務マネジメントとは
ビジネスの成功に欠かせないものとして、財務マネジメントをわかりやすく紹介し、
苦手意識を払しょくします。
②企業活動の捉え方
お金の流れから企業活動を捉える視点を、身近な事例をもとに説明し、
財務マネジメント感覚を養います。
③財務三表の読み方
財務三表の読み解き方を説明した後、実際に自社や競合他社の財務諸表から、
クイズ形式での演習を実施します。
1日目はここで終了です。
④自社の決算を使った振り返り演習
1日目の研修終了後、インターバル課題として自社の決算を読み、
グループで見解をまとめ、共有し、相互にフィードバックします。
さらに、ここでも他社との比較分析演習を入れることで、決算書を読み解くことが
できるようにします。
⑤簡易シミュレーションゲーム
財務諸表と実際の企業活動とのつながりを理解し、経営者の視点を
獲得してもらうために、グループ対抗でシミュレーションゲームを実施します。
仕入、販売、雇用、設備投資、資金調達などの意思決定をおこない、
その結果の財務諸表を作成し、経営成績で勝敗を決めます。
弊社では、個社ごとに完全オーダーメイドで研修をご提案しております。
パートナーとして協力いただいている外部トレーナーが400名以上おり、
個社ごとに合った研修をプロデュースしております。
アカウンティング研修のバリエーションも豊富です。
本記事を参考に、是非自社に合ったアカウンティング研修を実施しては
いかがでしょうか。