少子高齢化によって若い世代の労働者人口は年々減少しています。
そして今や当たり前のものとして定着している企業の人手不足問題。
企業も採用活動に力を入れ、どうにかして人材を確保します。
しかし、ここで若い世代の社員が確保できたとしても、
この次に待っているのは、彼らを一人前にするための教育です。
慢性的な人手不足に陥る現場では、若手社員が入ってきても、
彼らのために教育の時間を割く余裕はありません。
そのため若手社員が成長するために、とても重要となってくるのが、
OJT(On-the-Job-Training)であり、
その中でおこなう日々のコミュニケーションです。
しかし、OJTは簡単ではありません。
教える側の先輩社員の仕事の忙しさや、教わる側の若手社員との相性、
その時の仕事内容でもOJTの効果は変わります。
また、状況と相手に応じた対応が必要となるため、
教える側には高いコミュニケーション能力が求められます。
今回のテーマは、部下の成長を助けるコミュニケーションのコツ。
若手社員の成長をフォローするために、日々の仕事やOJTで
どのようなコミュニケーションが必要となるかを解説します。
若手社員の成長とは 〜職業人としての技術力・精神力の向上と仕事での貢献〜
一人の職業人として成長するためには、
専門的な技術力の向上と、人としての精神力の向上の両方が求められます。
技術力の向上とは、仕事における専門知識を身につけること、
仕事において、自分でできる範囲を広げたり、
より難易度が高いものができるようになることです。
また専門知識の修得を証明するために、
資格を取得することも技術力向上のひとつといえます。
もう一方の精神力の向上は、精神的成長とも言い換えられます。
精神的成長とは、社会人として自立する意識、
仕事で厳しい状況になっても立ち向かっていける気持ちの強さ、
周りの人たちと助け合いながら仕事を進めていける協調性や
リーダーシップなどです。
これは、ヒューマンスキルともいいます。
この技術力と精神力の両面の向上を意識しながら、
日々の仕事に取り組めるか否かで、
その人の成長スピードは大きく変わります。
そしてこれに加えて、日々の仕事で成果を出していくこと、
会社や顧客に対して貢献するという実績の積み重ねが大切です。
会社は学校ではなく、仕事はスキルの高さを競う競技ではありません。
仕事をとおしてその貢献度が周りから認められることで
成長したと評価されます。
仕事での貢献がないまま、いくら専門知識を身につけても、
メンバーと仲良く話せるようになっても、
会社では成長したと認めてもらえません。
伸び悩む若手社員の傾向と若手社員育成の課題
若手社員の成長を助けるためには、
うまく成長することができない若手社員の傾向を把握し、
状態に応じた対応をする必要があります。
ここでは伸び悩む若手社員の傾向とその原因について紹介します。
① ステップアップの過程がわからない若手社員
若手社員は自身の成長のために、
目の前の仕事で何を積み上げていくべきかがわからない状態です。
たとえば、さまざまな資格の中でどれを取得するべきか?
一般的な専門知識と、今の仕事に特化した業務知識のどちらを
優先的に身につけるべきか?
このような具体的な悩みを持つ人は、自分自身が
これからどうステップアップしたいかが描けていないことが原因です。
また、それ以前の状態で、自分がこの先どうなりたいのか?
という人生の命題のような難問で悩み、その場で立ち止まっている人もいます。
会社としては、どうすれば職能ランクがあがるのかを示しています。
あとは若手社員が、そこから自分の道を選択すれば良いのですが、
自身の将来に直結する部分でもあり、必要以上に慎重にもなります。
その結果、
これからのステップアップ過程を考えることを先延ばしにしています。
この傾向にある人に対しては、
自身のキャリアについて定期的に考える機会を持つことが必要です。
会社からキャリア研修を勧めるなども有効です。
② 日々の仕事に忙殺されている若手社員
成長の意欲もあり、
またステップアップのためのキャリアプランを持っていたとしても、
日々の仕事をこなすことで一杯いっぱいで、
それを実行に移せていない状態です。
目の前の仕事に集中することで、仕事の実行力はついていくので、
決して成長していないわけではありません。
しかし、職能ランクアップのための資格取得ができない、
できる仕事の幅が広がらないなど、
周りの人からは、その人が成長に足踏み状態であるようにも見えます。
また実際の能力としても、一般的なヒューマンスキル知識に乏しいなど、
偏った状態になっている場合もあります。
この傾向にある人には、
上司やリーダーがその人の仕事量の調整をしてあげること、
また、その人自身が時間を有効に使えるように
タイムマネジメントの知識を身につけることも有効です。
③ 成長意欲そのものが低い若手社員
ステップアップの過程がわかり、それを実行する時間があったとしても、
成長の意欲そのものが低い若手社員もいます。
これは、自分には無理と最初から成長をあきらめているケースと、
仕事よりもプライベートを充実させたい、
今の状態が維持できれば無理に頑張らなくて良いという、
仕事の優先度を下げて考えているケースがあります。
どちらにおいても、その人が本気になって仕事と向き合わないことには、
周りから何を言ってもどんなお膳立てをしても、空振りに終わります。
この傾向にある人には、仕事で成長意欲が高い人と一緒に組ませるなどして、
日々の仕事で周りからの刺激を受けられる状態にすることが必要です。
また、ときには「そのままの状態では自分の居場所がなくなってしまうよ」と
厳しいことも言ってあげる必要もあります。
若手社員の育成方法 ~若手社員の成長を促すコミュニケーションにおける3つのコツ~
いくら若手社員の成長を強く望んだとしても、
彼らの代わりになって勉強をしたり、仕事の経験を積むことはできません。
こちらができることは、彼らの成長意欲を高める手助けや、
実際の仕事でフォローをするだけです。
ここでは若手社員の成長促進のために、
日々のコミュニケーションで気にしておくべきポイントを解説します。
・ポイント1:手本を見せる
「とりあえず間違えても良いからやってみて」という指示のもと、
手本となるものや、参考となる情報がない仕事を
若手社員に指示する上司がいます。
上司としては、まずは若手社員がその仕事に触れる機会をつくり、
そこから何をすべきかなどを感じ取って欲しいという意図があり、
このような仕事の渡しかたをすることがあります。
しかし、ほとんどの仕事やスキルの修得は、
それを出来る人や参考になるものを見て、その真似をすることから始まります。
そして「真似る」ことを繰り返すことで、
いつしか違う仕事をやることになっても、どこが難しくて時間が掛かりそうか、
どこが重要そうかなどの、注意すべき箇所を感じとれるようになり、
そして仕事全般の効率も良くなります。
もちろん、仕事の中には手本となるものがなく、
手探りでやらなければならない仕事も多々あります。
しかし、こういった仕事を「真似る」ことを覚える前の若手社員に渡しても、
全く見当違いのことで時間を使ったり、
うまくいかないことで自信を失くしてしまったりと、
あまり良い結果に結びつくことはありません。
経験の浅い若手社員に仕事を指示する際は、その手本となるものを示しつつ、
まずは「真似る」ことができるようになることを意識させましょう。
・ポイント2:仕事を任せる時は「丸投げ」しない
細かい段取りや指示が一切なく、仕事の目的だけを伝えて、
あとはそれを担当する人に全て任される。
いわゆる「丸投げ」の状態で仕事を指示されることがあります。
これは仕事を渡す側の上司やリーダーが、
その仕事に対して十分な知識・情報がない、
もしくは細かい指示を出す余裕もないくらい忙しい場合に、
このような仕事の渡しかたになってしまいます。
もちろん「目的だけ伝えればあとはその人の能力で十分対応できる」
という確信があるからこその丸投げなのですが、
その確信が担当者には伝わらず、ただ責任ごと仕事を
まるまる押し付けられたと感じてしまうことがよくあります。
そして責任を押し付けられたと感じてしまった担当社員は、
その与えられた仕事は、ただこなすのみで、
そこから何かを学んだり、その経験を次に活かすこともありません。
細かい指示を出せない仕事を任せる際は、目的だけを伝えるのではなく、
その仕事を始める前に担当者が、その仕事をどのような手順で
おこなうつもりなのかの確認までおこないましょう。
仕事の手順をお互いに確認するだけでも、
丸投げされているという感じはかなり薄まります。
またその手順確認の中で、その仕事をする上での不足している情報や、
事前に決めておかなければいけないことが明確になれば、
その仕事が失敗するリスクも抑えられます。
・ポイント3:評価基準を示すために「褒める」と「叱る」
若手社員と仕事をするなかで、
日々のコミュニケーションが大切なことは言うまでもありません。
このコミュニケーションが苦手な上司は、会話はしていても、
その内容は作業指示や状況確認ばかりで、
上司からの一方的なものになりがちです。
逆にコミュニケーションがうまい上司やリーダーは、
そこでの会話から、若手社員が何に困っているか、
何に不満を持っているかなどを聞き出します。
これは普段から「傾聴」を意識してコミュニケーションをしているためです。
そして部下育成がうまい上司は、この「傾聴」に加えて、
相手を「褒める」こと、「叱る」ことを効果的におこないます。
仕事で困難を乗り越えたり、次につながる成果を出したときは、
しっかりと褒めて、
その逆に気が抜けていたり、
今後の若手社員が自の評価を下げるような仕事内容を見かけたときは叱ります。
褒めたり叱ったりする際に、注意しなくてはいけないのが、
感情的にならないように話をすることです。
いくら相手にとって必要なことでも、こちらが感情的に話してしまうと、
相手も感情的にそれを受けとってしまいます。
その結果、褒められても叱られてもその場だけで終わるか、
内容は忘れてその時の感情だけが残ります。
感情的にならずに褒めるまたは叱り、何をすれば良い評価を得られ、
何を怠れば悪い評価を受けるのかを伝えることが大切です。
そして若手社員にこの評価される基準が正しく伝われば、
彼らは自らの努力で良い評価を得ることができます。
会社が社員を評価する職能基準は画一的にしか書かれていません。
現場の具体的な仕事をとおした評価基準は、
その現場の上司やリーダーにしか示せません。
若手社員が日々の仕事で得る様々な経験から、より良く成長するために、
その手助けとして
普段の会話に褒めることと叱ることを組み込んでいきましょう。
若手社員の育成を促す研修事例紹介
若手社員の育成が成功するかどうかは、
会社や組織の持続可能性を高めることにつながる、重要な問題です。
若い世代の労働者人口は年々減少しており、
若手社員の離職は会社にとって大きな痛手となるからです。
仕事を通じて成長できることを実感することは、
若手社員の仕事への意欲を引き上げ、継続就業意向の向上につながります。
そのためには、これまで書いたとおり、
OJTや普段でのコミュニケーションを成功させなくてはいけません。
ですが、多様な価値観が認められるようになり、
また、リモートワークのような多様な働き方も広がっている昨今、
忙しい先輩社員や上司が十分なフォローをすることは、
時間的にもスキル的にも難しくなっています。
そこでおすすめしているのが、若手社員の育成を促すための、
一気通貫した研修づくりです。
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一例ではありますが、弊社で実施している具体的な研修事例は、
以下のコラムをご参考にしてください。
【若手社員向け研修事例】
・20代若手社員を前向きにするキャリアデザイン研修事例
・肩書や年齢に関係なくリーダーシップを発揮できる人材を育成する研修事例
・思い通りにならないことがあっても簡単に“折れない”人材を目指すレジリエンス研修事例
・限りある時間を最大限に活かせるようになるタイムマネジメント研修事例
・やるべきことを見える化して仕事のモチベーションをあげるタスクマネジメント研修事例
【先輩社員・上司向け研修事例】
・“組織への貢献意識が低い”若手社員とのチームビルディング研修事例
・若手社員のやる気を引き出す接し方ができるようになる1on1研修事例
・“褒めて育てる”を失敗しないOJTリーダーを育成する研修事例
・若手社員を上手に叱れるようになるプログラムを入れた新任管理職研修事例
・若手社員にうまく仕事を指示するためのわかりやすい伝え方・書き方研修事例
【参考記事】
・研修計画のつくり方や失敗しないためのポイントについて解説